フランスの名門ゴルディーニ 「魔術師」と呼ばれた伝説的なルノーチューナー 現代のアルピーヌへ続く高性能車の系譜

公開 : 2026.09.26 11:50

質素なドーフィンの性能を引き出す

1956年、ルノーが開発した質素なリアエンジン搭載のセダン『ドーフィン』は、ラリー界で連勝を飾り、誰もが驚く結果を残した。ドーフィンは決して高性能車ではなかったが、こうした活躍によって車両が持つ潜在能力への期待感が高まっていった。そして、職を失っていたゴルディーニ氏こそが、その能力を開花させるのに最適な人物だったのだ。

このコラボレーションの成果が『ドーフィン・ゴルディーニ』であり、同氏の名を冠した初のルノー車である。1957年のパリ・モーターショーで初公開され、0-100km/h加速に27秒を要するなど決してロケットのような速さではなかったが、翌年のモンテカルロ・ラリーでは総合優勝を果たした。

ルノー・ドーフィン・ゴルディーニ
ルノー・ドーフィン・ゴルディーニ

ゴルディーニ氏のエンジン開発における類まれな才能のおかげで、小さな直列4気筒エンジンから性能が引き出され、ドーフィンはますます速くなっていった。その集大成と言えるのが、人気を博した『1093』というモデルだ。これは最高出力55psのホモロゲーション・スペシャルであり、生産台数はわずか2140台に留まったが、ドーフィンのラリー連勝記録を維持することに貢献した。

高性能版ドーフィンの成功を受け、その後、2台目のルノー・ゴルディーニモデルが登場した。これは同シリーズの中で最も有名なモデルとして歴史に名を残すことになる。

象徴的な『8』の登場と活躍

1964年、ドーフィンの後継車である『8』に白羽の矢が立ち、太いホイールとタイヤ、高性能なサスペンション、そしてクローズドレシオのトランスミッションが採用された。また、4灯式ヘッドライトを備えたフロントデザインも有名で、ボディは青色に塗装され、上部にはオフセットで2本の細く白いストライプが施された。

その外観はまさに高性能モデルにふさわしいものであり、ゴルディーニ氏のエンジンチューニングのノウハウにより、走りも申し分ないものとなった。『8ゴルディーニ』は標準車のほぼ2倍にあたる最高出力95psを発生した。

ルノー8ゴルディーニ
ルノー8ゴルディーニ    ルノー

1966年のモデルチェンジで1.3Lエンジンと5速トランスミッションが採用されると、最高速度は160km/hを超え、当時としては驚異的な数値となった。

8ゴルディーニはラリー界を席巻し、サンレモやツール・ド・コルスで優勝を果たしただけでなく、世界初のワンメイクレースシリーズの開催にも影響を与えた。

あらゆる点で、ルノーとゴルディーニの結びつきは自動車業界において確固たるものとなっていた。そして1969年、ヴィリー=シャティヨンに新工場を建設し、ゴルディーニの事業がルノーブランドに完全に統合されたことで、その関係はさらに強固なものとなった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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