フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(1) エンジンモデルとして設計し直す、前例のない計画 生憎6速MTのみ

公開 : 2026.10.29 18:05

EV版の販売低調により、急遽開発されたフィアット500 ハイブリッド。設定は1.0L 3気筒の自然吸気に6速MTのみとなります。速度を落とさず小気味良く走らせる楽しさを、UK編集部が試乗で味わいます。

EVのみへの1本化は「自殺行為だった」

こんな逆転的モデルは珍しい。新しいフィアット500 ハイブリッドは、イタリアの大手自動車メーカーを襲った困難を、象徴する1台といえる。

2024年8月に、同社はエンジン版500の生産を終了。バッテリーEVの新型、500eへ後任を完全に託す計画だった。ところが、市場の反応は予想以上に冷たかった。多くのユーザーは、他ブランドのガソリン車へ流れてしまった。

フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(英国仕様)
フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(英国仕様)

そもそもエンジン版の500は、欧州で施行された、サイバーセキュリティに対する規制で存続が難しかった。発売から20年近くが経過したモデルの改修には、多額の新規予算が必要なことは明らかだった。

フィアットの本拠地、トリノのミラフィオーリ工場は数か月も稼働を停止。多くの従業員が解雇され、ディーラーは500eの在庫処理に迫られた。欧州のフィアットを率いるガエターノ・トレル氏は、EVへの1本化が厳しい選択だったことを認めている。

65psの1.0L 3気筒・自然吸気に6速MTのみ

果たしてフィアットは、EV専用開発の500eをエンジンモデルとして設計し直すという、前例のない計画を実行する。その結果、500eと500 ハイブリッドは同一ラインで生産されることになり、同社の重要な保護資産、ミラフィオーリ工場は息を吹き返した。

この作業は20か月で完了したが、エンジンと6速MTを載せるため、サブフレームは新開発。駆動用バッテリーは燃料タンクへ置換されるなど、全面的に手は加えられた。

フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(英国仕様)
フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(英国仕様)

ただし、500eのボンネットは極めて小さく、グランデ・パンダが積む1.2Lピュアテック・ユニットは収まらなかった。既存エンジンで唯一の選択肢となったのは、イタリア市場向けパンダの、1.0L 3気筒。開発費の都合と思われるが、生憎ATの設定はない。

電圧12Vのマイルドハイブリッドで、スターター・ジェネレーターがアシストするが、自然吸気で最高出力は65ps。最大トルクは9.3kg-mと、少々物足りない。

口ひげのような小さなインテーク

見た目は、EVの500eとほぼ同じ。プロポーションはいかにも500で、小さなサイズで縦列駐車も簡単だろう。フロントマスクには、エンジンなどを冷やすための小さなインテークが開けられている。口ひげのようで、カワイイ。

英国仕様のトリムグレードは3段階で、アイコンがエントリー。16インチ・アルミホイールにLEDヘッドライト、ブラックのファブリック内装、リアのパーキングセンサーなどが標準で、なかなか充実した内容といえる。

フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(英国仕様)
フィアット500 ハイブリッド・ラ・プリマ(英国仕様)

最上級は、ホイールが17インチになるラ・プリマ。パスタの「カネローニ」を模したステッチが、ビニールレザー・シートに施され、シートヒーターやバックカメラも得る。初期限定で、ビニールレザー内装のトリノ・グレードも用意される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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