いろいろ許せるカワイイ3ドア フィアット500e(1) 実は5年目 電動ハードの長短は?

公開 : 2025.08.28 19:05

半世紀前のアイデンティティを継承する500e レトロモダンな雰囲気で統一された車内 UP! GTIより素早い加速 物足りない航続距離 期待以上のグリップとトラクション UK編集部が試乗

半世紀前のアイデンティティを巧みに継承

2021年に、電動の新世代として意気揚々と登場した500e。販売数の推移は、悩ましい自動車市場の縮図と呼べるかもしれない。登場直後は良く売れ、英国でも1年間に5000台が提供されている。2023年の欧州では、最多売の小型EVに君臨したほど。

だが、直近の販売は鈍化。ガソリンエンジンで走る3代目の500は、生産が終了した2024年でも1万台以上が英国で売れていた。対して電動の4代目は、1000台を割っている。実力の高いライバルの登場が、追い打ちをかけているようだ。

フィアット500e 42kWh レッド(英国仕様)
フィアット500e 42kWh レッド(英国仕様)

半世紀前のオリジナルのアイデンティティを、巧みに継承する500e。同クラスのハッチバックが5ドアのみへシフトする中で、3ドアを維持する数少ない1台となっている。

スタイリングは先代と似ているが、並べてみると明らかに進化したことがわかる。サイズもプロポーションも、内面同様にしっかり新しい。それでも全長は3632mmで、全幅は1683mmと、小柄なままだ。

物足りない航続距離 キャンバストップも

プラットフォームは500e専用のスケートボード構造で、フロントに駆動用モーターが載る前輪駆動。サスペンションは前がマクファーソンストラットで、後ろはトーションビームとなる。最高出力は、95psか118psの2段階が用意される。

駆動用バッテリーはフロア下に敷かれ、容量は21.3kWhか37.3kWhの2択。航続距離は189kmか320kmがうたわれる。発売時は不足ない距離といえたが、ルノー5 E-テックなど、新モデルは軒並み400kmへ迫る。物足りないことは否めない。

フィアット500e 42kWh レッド(英国仕様)
フィアット500e 42kWh レッド(英国仕様)

反面、このデザインへ惚れているなら、目をつぶれる差かもしれない。ボディはクラシカルでスタイリッシュで、チャーミング。天井部分を後方へ折り畳める、キャンバストップのカブリオも用意されている。

2025年仕様として小変更を受けたが、ボディ塗装に新色が追加され、化粧トリムなどが改められた程度。上級グレードで標準装備の、タイヤが太くなる17インチホイールは、それ以外でもオプションで組める。

レトロモダンな雰囲気で統一された車内

インテリアは、硬質なプラスティックが多く露出しているものの、デザイナーの巧みな処理でチープ感は限定的。ボディカラーと同色のパネルがダッシュボードを彩り、座り心地の良いシートの造形もポップで、レトロモダンな雰囲気で統一されている。

インフォテインメント用タッチモニターの下には、エアコン用のハードボタン。グロスブラックで、指紋は残りやすいが。シートヒーターは、モニターへ触れて操作する。

フィアット500e 42kWh レッド(英国仕様)
フィアット500e 42kWh レッド(英国仕様)

多くの情報が表示されるタッチモニターは、初見では戸惑うかもしれないが、慣れればメニュー構造は論理的。反応も素早い。左側にはショートカットメニューが固定表示され、スマートフォンとは無線で連携できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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