ボナムス・クワイルロッジ・オークション

●2016.08.19 カーメル／CA／アメリカ
世界的な夏の風物詩となったモントレー・ウイークで開かれるメジャー・オークションの先陣を切ったのは19日にカーメルのクワイル・ロッジで開催されたボナムスだ。激動する中、その結果やいかに。

 
8月のモントレー・ウイークはコレクターズカー・オークション界の天王山といえるものだけに、これまで数多くの記録が刻まれてきた。今年は経済の先行き不透明感が顕著になってきただけに、その結果が世界中から注目を集めている。そのような状況下で、最初に開かれたのがボナムス・クワイルロッジ・オークションである。

カーメルのクワイル・ロッジで行われたモータスポーツ・ギャザリングの併催オークションとして開かれたもの。ボナムスは花形と言える高額車は控えめで、ほどほどの価格のコレクター向けの車両を中心とした115台を用意した。その内落札されたのは97台で落札率は84.34%と好調だったが、主催者が事前に発表する予想落札額を超えたのは97台中46台だけで、落札された半数以上がそこまで入札が進まなかったという事実が見える。

また、ここに来て1$=100円と言う大幅な円高傾向に振れているため、日本円での比較では動向がハッキリ見えないため、あえて米ドルで対比することにした。余談だが同じ10万ドルの落札額でも昨夏は1245万円だったものが、いまは1000万円で済み、車両価格も大きく値を下げている現状は、日本のコレクターにとっては買いの時期といえよう。

そこで昨年のボナムス・クワイルロッジ・オークションの落札額と対比しながら結果を見てゆこう。まずは恒例のトップ10は、最高落札額をマークしたのは目玉車両だった1931年型ブガッティ・タイプ 51 グランプリ 2シーターの4000万ドルで、ここに2014年型フェラーリ・ラ フェラーリが3685万ドル、1904年型メルセデス・シンプレックス 28-32HP 5座リヤエントランス・トノーは280.5万ドル、1985年型フェラーリ 288GTOが211.2万ドル、2014年型マクラーレン P1は209万ドルまで値を上げた。ここに1955年型ランチア・アウレリア B24S スパイダー・アメリカの140.25万ドル、1930年型デューセンバーグ・モデル J タウン・カブリオレ/125.4万ドル、1989年型フェラーリ F40/115.5万ドル、1956年型ポルシェ 356A カレラGS スピードスター/89.1万ドル、1936年型ベントレー 4 1/4ℓ ツアラーの66万ドルというアメリカらしい結果となった。

オークションの物差しともいえるフェラーリで落札額の変化を見てゆくと、盤石の存在だった288GTOは昨年236.5万ドルで落札されていたものが今年は211.2万ドル、F40は123.75万ドルから115.5万ドル、デイトナは74.8万ドルだったのが60万ドルと思われる最低落札額まで届かず流れてしまった。そんな中で308GTSiが15.4万ドルを記録しているが、このクルマは走行が僅か3200kmで新車といえるコンディションを保っていることが評価されたもの。ちなみにアベレージ・コンディションの308GTSは5.5万ドルで終わっている。このほか昨年なら20万ドルは固かった走行4400マイル(7040km)の後期型テスタロッサは、極上車ながら12.98万ドルに留まっている。唯一健闘したのがラフェラーリの368.5万ドルで、新車で買えなかった人が多く、ほとんど流通しないためここまで上がったものと思われる。また同様にほとんど出てこないマクラーレンP1は209万ドル、ランボルギーニ・レヴェントンは入札が進まず120万ドルに達せず流れてしまった。

ポルシェで見てゆくと356AカレラGSスピードスターは、究極といえる存在であることに加えブラック/レッドのカラースキムが評価され新記録となる89.1万ドルを記録した。いっぽうで実質スピードスターの356AコンバーチブルDは、昨年のカブリオレの落札額以下の14.85万ドル、最初期の911(901)は昨年25.3万ドルだったものが20万ドルに届かず流れてしまった。また昨年は23.65万ドルで落札されていた1973年型911Sは13.2万ドルに留まっている。同様に930ターボも下落傾向にあり、SCタルガに至っては4.62万ドルとバブル前に近い額まで下がってきた。

このほか一時期高騰したオースチン・ヒーレー初期型のBN1や、ジャガーEタイプも現実的な落札額になってきた。また、これまで圧倒的な強さを見せていたメルセデス・ベンツ500Kカブリオレと300SLロードスターなどの高額車も流れている。これに対して程々の価格帯のクルマは好調で、オークションが愛好家に帰ってきたこと伺わせた。