意図したエンジニアの「広告塔化」なぜ? 自動車メーカーの狙いとは

公開 : 2018.03.21 18:10  更新 : 2021.03.05 21:36

脚光浴びる技術者 特徴は

科学者やプログラマーや技術者を新しいロックスターのように持ち上げるのはやりすぎだろうか? そうかもしれないが、両者の区切りはあいまいになってきている。今日の2大オタク、物理学者のブライアン・コックス教授とテスラ/スペースX創始者のイーロン・マスクのすさまじい露出をみれば、もはやオタクは陰でこそこそするだけではないことはわかってもらえるだろう。

しかし、こんなことが自動車の世界に何の関係があるのだろう? 実は、同じことが起こっているのだ。こちらの額の広がった業界人たちは、われわれにとっては自動車技師なのだが、かつてなく讃えられる存在になろうとしているのだ。もっとも、名声をとどろかせる新しい世代の技術者はすでにいる。たとえば、911 GT3のキャンバー角を決めた男はいまや有名人だ(まあ、超速いクルマのファンの間だけだが)。

名の知れた技師は、たしかに自動車の草創期からいた。たとえばチャールズ・ロールスとサー・ヘンリー・ロイスは生前も非常に有名だったが、それは技師としてというよりは偉大なブランドの設立者としてだ。エンツォ・フェラーリやフェルッツィオ・ランボルギーニにも同じことがいえる。それに対して、いまから紹介するひとたちはメーカーの従業員なのだ。

アンドレアス・プレウニンガーはポルシェのモータースポーツ部門のトップ。トビアス・ムアースはメルセデス-AMG部門のボスだ。マット・ベッカーは、ロータスをすばらしいハンドリングマシンに鍛えあげたが、いまはアストン マーティンで同じように精を出している。アルバート・ビーアマンは以前BMW Mで活躍したが、今はキアとヒュンダイでせっせと働いている。

科学者がアイドル化するこの世相では、彼らをはじめとする技師たちの露出も当然ながら増えることになる。まあ、スーパーで熱烈なファンにもみくちゃにされるようなことはないだろうが、たとえばこの中の誰かがシリアル売り場でブランフレークでも探していたりするのを見つけたら、まず二度見するにちがいない。

ちなみに、完全なロードカー部門の従業員であるプレウニンガーやムアースの志向は、ゴードン・マーレイやエイドリアン・ニューウェイ(彼の詳細はのちほど)のような大技術者とはまったく異なる。いうまでもなく、あとのふたりはもともとモータースポーツ技術者で、そちらに重きをおいている。レースで名前を売り、それからロードカーの世界へ入ってきた人間だ。

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