【ワンオフも制作可能】アストン マーティンの「Q」 コンコルド・エディション ゴールドフィンガー ほか 後編

公開 : 2021.10.03 13:45  更新 : 2021.10.12 16:20

映画007の主人公といえば、Q、ジェームズ・ボンド。アストン マーティンにも、Qと呼ばれる部門が存在します。その仕事の一部を英国編集部がご紹介します。

DBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション

執筆:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
アストン マーティンが有する3つの工場は、すべてが英国空軍の基地だった場所にある。そこでQ部門は、航空機をテーマにしたウイング・シリーズを設定。特別なモデルをラインナップしている。

最新のウイング・シリーズとなるのが、DBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション。10台の限定で、2021年の春から生産が始まっている。今回撮影できたのは、工場を最初にラインオフしたクルマだ。

アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガーとDBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション、ヴァンテージ 007エディション
アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガーとDBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション、ヴァンテージ 007エディション

コンコルドは、英仏共同で開発された超音速旅客機。ご記憶の読者も多いだろう。コンコルド・エディションはその旅客機へ敬意を表した限定車で、多くの特徴的なデザインが落とし込まれている。

「このプロジェクトに参加でき、光栄に思います」。とサイモン・レーン氏。「フィルトンの街にある、コンコルド・ミュージアムとブリティッシュ・エアウェイズ・ヘリテイジセンターを訪問。多くのアイデアを得ることができました」

コンコルドは20機が製造され、10機づつ、英国とフランスの航空機会社へ納入された。一方のコンコルド・エディションは、旧コンコルド工場の敷地内にある、アストン マーティンのブリストル・ディーラーを通じて販売された。

エアバス社とブリティッシュ・エアウェイズ社の協力を得て、10台のクルマにはフィルトン工場で作られたコンコルドの登録コードと同じものが割り振られているという。ほかにも、航空機マニアを喜ばせる作り込みが沢山ある。

実機のアルミを溶かしたシフトパドル

「シフトパドルは、ブリティッシュ・エアウェイズから提供されたアルミ材を用いています。ヒースロー空港に残る、コンコルドの実機から外したアルミ材を溶かし、シフトパドルとして成形しています。実際のコンコルドに触れながら、運転できるのです」

「カーペットも、未使用だったコンコルドの在庫品を用いています。飛行中に少し伸びる機体に合わせて伸縮する、特別設計の生地なんです。コンコルドは高速なあまり、飛行中に熱で全長が20cmほど伸びたんですよ」

アストン マーティン・DBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション
アストン マーティン・DBSスーパーレッジェーラ・コンコルド・エディション

さらにコンコルド・エディションには、専用のラゲッジセットが付いている。コンコルドの最終飛行で乗客へ提供されたものがベースで、ブリティッシュ・エアウェイズのカラーで仕上げられた。

インテリアでは、天井の内張りにソニックブームをモチーフとしたグラフィックがあしらわれる。サンバイザーも専用品だ。

ボディまわりで最大の特徴となるのが、フロントフェンダーに切られたエアベント。コンコルドの機体をモチーフにした造形が与えられている。「とても美しいピースです。アルミニウム・ビレットで削り出され、丁寧に手で磨かれています」

サイモン氏も特別な思い入れがあるようだ。「特に際立つ部分といえます。われわれが愛する職人技を表現するものです」

ちなみにプロジェクトの一環として、コンコルド・エディションの売上金の一部を、アストン マーティンはエアリーグ・トラストへ寄付している。恵まれない子どもたちへ飛行機会を設けたり、技術職への就職を支援する活動だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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