DS9 詳細データテスト じつにリラックスした乗り味 優れた質感 パフォーマンスと驚きは足りない

公開 : 2022.02.12 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

このクルマに特有のキャラクターを、見誤ることはむしろ難しい。中型セダンとしては、快適なクルージングを最優先し、スポーティさを二の次にするのは、いまどき珍しい。

かつて、フランスのクラシックな大型サルーンは、押し並べてそういう特性を備えていた。精神的なルーツに当たるクルマたちの中でも最高の部類は、少なくとも多少は華のあるハンドリングとドライバーを楽しませる走りに、なめらかな足取りを生むしなやかさをあわせ持ち、そのバランスに優れていた。

基本的には快適志向で、スポーティな走りは二の次という印象。ホイールベースの長さもあってハンドリングは緩慢だが、走りはなめらか。それでいて、ふわついた乗り心地でもない。
基本的には快適志向で、スポーティな走りは二の次という印象。ホイールベースの長さもあってハンドリングは緩慢だが、走りはなめらか。それでいて、ふわついた乗り心地でもない。    MAX EDLESTON

この新顔もまた、その流儀に沿った運動性をみせる。しかし今回のDSは、かなりのグリップレベルと、このクルマに期待されるよりもバラつきのないボディコントロールをこそ賞賛されるべきだ。

兄弟分といえるプジョー508と比べて、9はそのサイズを感じる。ステアリングホイールは大きく、ロックトウロックは3回転。ホイールベースが長いので、舵を切った際のシャシーのレスポンスもゆるい。

しかし同時に、シトロエンらしくスプリングの動き出しに自由な部分があり、路面のバンプやキャンバー、盛り上がりなどを自分の強みに変えてしまうような対応ぶりをみせる。コーナーや、ダンパーに負荷がかかっているような状況でも流れるように駆け抜けるのだ。それこそじつに巧みに、そして心動かされるように。

しかもそれは、高速スタビリティや垂直方向のボディコントロールを犠牲にすることがない。モダナイズされ、プレミアムブランド化したシトロエンC6のように、やわらかすぎてふわふわ動くものではないのだ。

コーナリング時のロールや上下動はよく抑えられている。良好な静粛性と、控えめながら確かな沈着ぶりをあわせ持つが、速度上昇や路面悪化に伴って先に低下するのは前者のほうだ。軽く無感覚なステアリングや、アンダーステア寄りで安定志向の限界ハンドリングゆえに、あまり飛ばす気にはならないが、速度を上げてもそこそこの走りをみせてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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