テスラ・モデルY 詳細データテスト 強力な動力性能 走りの洗練性は問題外 充電設備の内容は圧倒的

公開 : 2022.04.02 20:25

快適性/静粛性 ★★★★☆☆☆☆☆☆

テスラが、デザインを重視しているのは明らかだ。パフォーマンスやエネルギー密度、その他ユーザーの評判を落としたりコストをかける価値がなかったりすることはないと考えられたものは、いずれも等しく重んじられている。そのプライオリティのリストで、乗り心地と洗練性は明らかに低い位置にあるのは間違いない。

サスペンションの減衰は比較的うまくいっているが、高速道路にいてさえ落ち着くことは決してない。テスト車は19インチホイールを装着していたが、20インチを選択することもできる。それによって損なわれるしなやかな乗り心地はもともとないので、どちらがいいか尋ねられたら、どちらでもお好きなように、と答えるだろう。

乗り心地は、これほどの大パワーを秘めているクルマであるにしても硬すぎる。また、エンジン音がしないからといって、遮音を軽んじすぎている印象が拭えない。
乗り心地は、これほどの大パワーを秘めているクルマであるにしても硬すぎる。また、エンジン音がしないからといって、遮音を軽んじすぎている印象が拭えない。    MAX EDLESTON

その大径ホイールは、路面不整をすべて拾い、車内を突き上げてくるような印象だ。それは身体に感じるだけではなく、音としても伝わってくる。遮音性が標準以下なのだ。

たしかに、エンジン音は存在しないぶんだけ、ほかのノイズが余計に気になってしまうという側面はある。それでも、騒音計の数字は嘘をつかない。113km/h走行時の数値は70dBAで、ずっと小さくて安価なハッチバックのスコダ・ファビアと同じ。スコダ・エンヤックより3dBA、アウディQ4 E−トロンより4dBA、ジャガーFペイスよりはじつに7dBAも大きいのだ。

大面積のパノラミックルーフと、パーシャルシェルフの不在が、音環境の洗練性欠如の一因ではある。しかしながら、それが納得のいく弁明だとは言えない。

シートの出来は、抜きん出ているわけではないがいい。周囲を見下ろすようなドライビングポジションはこのクルマに見合ったもので、たいていの体型に合わせられるだけのアジャスト性も備えている。座面がやや短かったものの、テスター陣は誰もが長距離を快適に過ごせた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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