オススメは174psのプロ フォルクスワーゲンID.5へ試乗 新型クロスオーバー・クーペ

公開 : 2022.11.18 08:25

VWのBEVクロスオーバー、ID.4のクーペ版となるID.5。競合より印象は薄いものの、好感が持てると英国編集部は評価します。

クーペ風ルーフラインのクロスオーバー

英国価格が5万ポンド(約830万円)もするモデルは、国民のクルマとは呼べないだろう。だが、フォルクスワーゲンID.5の価格帯はそこより上にある。

日本でもID.シリーズの告知がスタートしているが、同社はバッテリーEV(BEV)の拡充へ積極的に取り組んでいる。今回試乗した新モデルはID.5を名乗り、ID.4の派生モデルといっていいだろう。

フォルクスワーゲンID.5 スタイル・プロ(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.5 スタイル・プロ(欧州仕様)

ID.4はワゴン風のルーフラインを持つクロスオーバーなのに対し、ID.5はクーペ風ルーフラインを持つクロスオーバーだ。近年人気の、見た目重視のシルエットが与えられている。空力特性に有利で、航続距離はID.4と比べて若干伸びている。

多少割高でも、市場におけるクロスオーバー・クーペの支持率は高い。手堅いイメージのボルボもC40を投入するほど。

ID.5は、全体的に丸みを帯びたスタイリングが特徴といえる。ID.4も同様ながら、アグレッシブさを増すデザインが増えるなかで一線を画している。親しみやすい容姿は、ストロングポイントになると思う。

英国へ導入されるID.5の場合、グレードは174psのプロと203psのプロ・パフォーマンスという、シングルモーターの後輪駆動が2種類。ツインモーターで299psを発揮する、四輪駆動のID.5 GTXが頂点を飾る。

搭載される駆動用バッテリーは、77.0kWhの1択。航続距離はプロで526kmがうたわれる。急速充電能力は最大135kWまで対応するが、キアヒョンデは最大350kWと3倍近く速い。

後輪駆動の長所が活きる操縦性 加速力も充分

今回の試乗では、3種類すべてのステアリングホイールを握ることができた。先に明かしてしまうと、航続距離が1番長く最もお手頃な、シングルモーターのプロがオススメかもしれない。

シングルモーターのID.5の場合、最大トルクは31.6kg-mと同値。都市部で運転している限り、目立った印象の違いは感取できないためだ。

フォルクスワーゲンID.5 スタイル・プロ(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.5 スタイル・プロ(欧州仕様)

青信号での加速力は充分といえ、ステアリングホイールの操舵感は軽く反応が素早く、後輪駆動プラットフォームの長所が活きている。さらに攻め込むと、アンダーステアへ転じるが。

80km/hを超えた辺りから、203psのプロ・パフォーマンスが持つ能力の差が現れ始める。1t当たりの馬力は82psに対し96psと明らかに有利。0-100km/h加速も2秒鋭い。とはいえ、車重が2.1tもあるため鮮烈なダッシュ力を披露するわけではない。

動力性能の違いは、郊外の流れの速い区間や、高速道路の追い越し車線などで有効だろう。家族を乗せてキャンプへ向かうような時には、たくましい走りが歓迎されるはず。

回生ブレーキの強さを変えられる、ステアリングホイール裏のパドルは備わらない。クルマとの一体感という点では、ライバルに一歩譲るようだ。

さらにパワフルなID.5となるのが、GTX。英国価格は5万6460ポンド(約937万円)からで、最高出力の上昇割合を考えれば、お得感がないわけではない。

走りはスポーツカーと呼べないにしろ、魅力的な内容ではある。速度域の高い英国では、ID.5の半数がGTXになると予想されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

フォルクスワーゲンの人気画像