圧巻のアストン マーティンDBX707 もどかしいマセラティMC20 パワー不足なケータハム・セブン 420 BBDC 2022(3)

公開 : 2022.12.31 13:45

今年1番運転の楽しいクルマは? BBDC 2022(1) 公道とサーキットで11台を乗り比べ

数年前まで不可能と思えたような能力

今回のノミネート車両で、アストン マーティンDBX707は1番の重量級。車重は実に2245kgあり、モーガン・スーパー3とトヨタGR86、ケータハム・セブン 420カップの3台を合わせた数字に近い。

トップ10の選定時に血迷ったのでは、とお感じの読者もいらっしゃるかもしれないが、試乗後のコメントは肯定的な内容が中心だった。BBDC選手権に707psのDBX707が加わったことに対して、疑問はないだろう。

レッドのケータハム・セブン 420カップとグレーのアストン マーティンDBX707
レッドのケータハム・セブン 420カップとグレーのアストン マーティンDBX707

「今回のノミネート車両では、特に印象的なクルマの1つ。ドライバーへの訴求力は完璧ではないかもしれませんが、運転へ夢中になれます。数年前まで不可能と思えたような能力を、実現できています」。と話すのはリチャード・レーンだ。

ジェームス・ディスデイルも圧倒された様子。「信じられません。これほど大きく背が高く、重たいSUVで、こんな走りを実現していることは理解が難しい」

マット・ソーンダースはそこまで感心しなかったようだが、しなやかなサスペンションと高いドライビングポジション、壮大なエンジンパワーという組み合わせを公道で堪能したようだ。DBX707で評価すべきは、ただ獰猛なSUVだというだけではない。

デリケートとは表現できないにしろ、路上での操縦性は想像以上に正確。この手のモデルとしては、非常に重要なポイントといえる。サーキットを攻め立てて得られる充足感は限定的ながら、今回のBBDC選手権では才能に驚かされた1台といえる。

もどかしい思いにさせられたマセラティMC20

対照的に、もどかしい思いになったのがマセラティMC20だ。決してクルマの仕上がりが悪いわけではない。もう少し全体を磨き込めば、一層素晴らしい実力を発揮できるであろうことが、われわれへ伝わってきたためだ。

サスペンションの減衰力特性は好ましく、ボディ剛性も高く、グリップ力は甚大。ワインディングで扱う自信を高めてくれる、しなやかな乗り心地も得ている。しかも、630psの3.0L V6ネットウーノ・エンジンはダイナマイトのように鮮烈だった。

ブルーのマセラティMC2とイエローのポルシェ718ケイマン GT4 RS
ブルーのマセラティMC2とイエローのポルシェ718ケイマン GT4 RS

しかし、開発コンセプトや動力性能、価格では接近するマクラーレンアルトゥーラと、獲得点で開きが出てしまった。マット・ソーンダースが、サーキットでの印象をヒトコトでまとめた。「本当にワイルド。ですが、限界領域では挙動が予想しにくいかな」

ポルシェ911 GT3やマクラーレン・アルトゥーラ、フェラーリ296 GTBなどと比較すると、MC20のステアリングは軽すぎる。入力に対する反応の正確性や手のひらへ伝わる感触で、並ぶことができていない。

ブレーキペダルを踏み込んだ時の感触も乏しい。足へ伝わる情報量が少なく、実際に求めた減速が始まるまで戸惑う場面もあった。穏やかに運転している時は、特段気にならないのだけれど。結果として、今回は8位に留まっている。

記事に関わった人々

  • アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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