200馬力あれば夢中になれる トヨタ86を中古で(2) まさに逸品 UK編が惹かれる真髄とは?

公開 : 2025.09.15 19:10

貴重なFRでMTのスポーツカー シリンダー寸法がモデル名の由来 低く理想的なドラポジ 200馬力あれば思い切り夢中になれる 滑沢な操縦性と落ち着き UK編集部が中古車で魅力を再確認

200馬力あれば思い切り夢中になれる

2010年代半ばのホットハッチと比べて、速いとはいえないトヨタ86。それでも0-100km/h加速は7.4秒で、満足できる動力性能は備わる。むしろ、公道でもしっかりアクセルペダルを倒せる。

豊かな感触と、意思疎通のしやすさ、笑顔を生む楽しさこそ、86の真髄。ドライバーが努力するほど報いてくれる。200馬力あれば、郊外の道で思い切り夢中になれる。

トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)
トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)

アクセルレスポンスは鋭く、6速MTのレバーは、少し引っかかりがあるもののソリッド。回転数を高めるほど、小気味いいサウンドが放たれる。AUTOCARの計測では、車重は1235kg。サーキットを駆け回っても、ブレーキやタイヤへの負担は小さい。

他方、6速ATは低域での滑らかな変速が強み。デュアルクラッチのように鋭くはない。

特に評価したい滑沢な操縦性と落ち着き

AUTOCARで特に評価したいのは、操縦性の滑沢さ。減衰特性はよく練られ、衝撃吸収性を担保しつつ、姿勢制御は適度にタイト。滑らかに操れるステアリングと相まって、リニアで正確なコーナリングを叶えている。

タイヤはミシュランを履くものの、215/45と細身。トヨタ・プリウスと同等のサイズだったが、それが鍵ともいえた。グリップは控えめでありつつ、アクセルペダルを一定に保ったまま、0.99Gの定常旋回を披露したことへ当時のスタッフは唸った。

トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)
トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)

コーナーの入り口でブレーキを踏み、頂点を過ぎた辺りでアクセルを傾ければ、コーナリングラインは自在。意のままにオーバーステアを誘えるほど機敏でありながら、挙動は落ち着き、手に負えなくなる可能性は低い。

どう走らせるかは、ドライバー次第。これが、86の魅力の根底にある。

信頼性に優れ整備費用は高くない

小さなスポーツカーとして、乗り心地はピカイチ。軽量化で防音材が少ないためか、走行時の車内ノイズは大きめだが、長距離をリラックスして移動できるはず。

燃費は、穏やかに郊外の道を流して14.0km/L以上は狙える。サーキットを攻めても、2.0Lの自然吸気だから5.0km/Lを割ることはないはず。走りの楽しさを考えれば、納得できる効率だと思う。

トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)
トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)

トヨタだから信頼性に優れ、整備費用は高くない。後席が備わり、気軽に付き合えるコンパクトカーとしても訴求力は高い。こんなモデルは、実に珍しい。

ある程度の妥協を受け入れたがゆえの逸品

確かに、内装の質感や車内ノイズなど、指摘できる部分はある。ある程度の妥協はある。だが、あえてそれを受け入れた結果として、素晴らしい86が完成している。マツダMX-5(ロードスター)にかわる、新たな選択肢ともいえる。

改めて試乗したが、2010年代において最もシャープでファンな、小型・軽量なFRスポーツカーであったことを改めて実感した。お手頃な価格で購入でき、維持費を抑えられることは、中古車として見逃せない事実でもあるだろう。

トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)
トヨタGT86(86/2012〜2021年/英国仕様)

英国編集部は、今でも86に惹かれている。まさにトヨタの逸品だ。

◯:バレエダンサーのようなシャシーバランス ドライバー中心のキャビン 個性ある自然吸気エンジン
△:低域トルクはもう少し欲しい 走行時の車内が少しうるさい 一部の内装はチープ

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

トヨタ86を中古での前後関係

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