トヨタ・ハイラックス 詳細データテスト オンよりオフの走りで本領発揮 乗り心地には改善の余地あり

公開 : 2023.03.11 20:25

操舵/安定性 ★★★★★☆☆☆☆☆

車体の大きさそのものやアクスルのスペック、標準装着タイヤなどはすべて、ハイラックスGRスポーツにかなりの制限をかけるファクターだ。オフロード走行や、オンロードでもヘヴィデューティに使いたいなら、このクルマはジャストフィットするはずだ。自分がどんなクルマを買ったのか、そしてそのクルマの強みはなにか、それを理解できるかどうかが重要だと言ってもいい。

しかし、ここ最近のトヨタがハイパフォーマンスモデルに用いるGRブランドの目新しさに魅力を感じて、このハイラックスに関心を持つユーザーもいるだろう。たしかに、GRヤリスやスープラをトレーラーに乗せ、走行会の会場まで牽引するにはもってこいかもしれない。だが、それらGRの本命に、オンロードでのドライビングにおける魅力では遠く及ばない。

まずまず身のこなしがよく、比較的インフォメーションも伝わってくる。だが、そのサイズと重さではロールが出るのは避けられず、商用寄りのトラックベースゆえの妥協も否めない。
まずまず身のこなしがよく、比較的インフォメーションも伝わってくる。だが、そのサイズと重さではロールが出るのは避けられず、商用寄りのトラックベースゆえの妥協も否めない。    LUC LACEY

全長は5.3mを超え、全高は1.8mに達するこのクルマは、巨体と呼んで差し支えないサイズだ。また、競合するラプターとは異なり、その大きさを補完するようなサスペンションも持ち合わせていない。

標準仕様のダンパーとタイヤを装備したハイラックスは、多少なりともボディコントロールはGRよりいい。公道上で、合法的なスピードで走っていればの話だが。対するこのGRスポーツは、大きめのバンプや路面の波打ちを乗り越えるとバウンドするクセがある。

縮み側の減衰チューニングが、英国の一般的なカントリーロードで受けるより大きな入力の吸収に振られているということだろう。また、伸び側は明らかにお留守になっている。リアは、路面が複雑になると、リーフスプリング特有の、やや落ち着きなく、不安定なフィールが出てしまう。荷台へ常に300kgくらいの重しを乗せていれば、落ち着いてくれるだろうと思わされる感じだ。

オールテレインタイヤは、オンロードで意外なほどグリップしてくれる。ドラスティックなほどではないが、危機感を抱くような場面はまったくない。それがよくわかったのがフルブレーキテストだ。また、コーナーやラウンドアバウトへの進入でかなりやる気を出しても、同じ感想を持つことになる。

ターンイン初期は、そこそこのアジリティがある。また、全般的に荷重のかかったリアタイヤの横グリップが抜けるより先に、フロントの食いつきのほうが失われるようにできている。

オフロード性能のテストは限定的なものにとどまるが、バハのラリーカーのように跳ねながら飛ばすより、低速で悪路を行くほうが向いている。グリップも、路面とのクリアランスも、そしてドライバビリティも、望むままどこへでもいける感じだ。とはいえ、機敏さやダンピングの自由度、ジャンピングスポットを飛ばして突っ切れるか、といった点では、フォードのレンジャー・ラプターのようなわけにはいかない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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