ドライバーズカーとしての可能性 フォード・レンジャー・ラプターへ試乗 V6ツインターボで292ps

公開 : 2023.03.28 08:25

欧州市場向けピックアップのレンジャー。モデルチェンジ後の新型にも高性能なラプターが登場。英国で実力を探りました。

サファリラリー・マシンに迫る走破性

第2世代へモデルチェンジしたフォード・レンジャー・ラプターが、グレートブリテン島にもやってきた。島国のなかにも、この登場を喜ぶ人は少なくないはずだ。

実用的なダブルキャブを備えた、ただのピックアップトラックではない。荒野を高速で疾走する、サファリラリー・マシンに迫るような走破性を備えている。

フォード・レンジャー・ラプター(英国仕様)
フォード・レンジャー・ラプター(英国仕様)

新しくなった2代目は、ディーゼルターボを搭載していた先代よりひと回り大きくなった。ボンネットに収まるエンジンは、3.0L V6ガソリンターボへ交代している。アクティブ・エグゾーストシステムも搭載し、静かに走ることも可能だ。

新しいレンジャー・ラプターで興味深い点が、走行中にサスペンションが鳴らすカチカチという小さなノイズ。ジャンプなどでタイヤが一瞬浮いた状態になると、明らかにキャビンへ届く。

高性能とはいえ、公道走行可能なピックアップトラックがグレートブリテン島で頻繁に宙を舞うとは考えにくい。レンジャー・ラプターが開発された、真っ赤な大地が広がるオーストラリアなら、さほど珍しくないのかもしれないが。

このカチカチ音は、サスペンションのコントロールアームに取り付けられた、ポジションセンサーが発している。サスペンションが大きく伸縮した時に、シャシーの頭脳となるビークル・ダイナミクス・コントローラー(VDC)へ制御信号を送っているのだ。

本気の電子制御四輪駆動システムを搭載

例えばジャンブした場合、VDCは信号を受けてフォックス社製ライブバルブ・アダプティブダンパーの減衰力を調整。強い負荷へ備える。車重2454kg、全長5381mmもある大きなピックアップトラックを、しなやかに着地させるために。

タイヤが再び地面を掴んだ瞬間、アダプティブダンパーには相当な力が掛かる。しかし、その重量や慣性が生む急速なエネルギー変化を見事に吸収。ボディは何事もなかったかのように前進を続ける。

フォード・レンジャー・ラプター(英国仕様)
フォード・レンジャー・ラプター(英国仕様)

着地で姿勢が傾いたり、リバウンドすることは殆どない。サスペンションのトラベル量が限界に達していたとしても、それを感じさせることはない。オーストラリア人も驚くに違いない。

それ以外にも、オフロードでの能力には唸らされる。2代目レンジャー・ラプターには、前後アクスルへロッキングデフが組まれ、トランスファーギアも備わる、本気の電子制御四輪駆動システムが搭載されている。

シャシー構造は、従来的なボディ別体のラダーフレーム。最低地上高は265mmもある。タイヤは扁平率70のBFグッドリッジを履く。ほぼ、向かうところ敵なしだ。

ホイールベースは長いものの、タイヤを大きく上下に動かしながら、岩山を難なく登る。アルプス山脈を軽快に歩く、野生のヤギのように。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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