時代を超越したデザイン メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型) 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2023.07.08 07:06

メルセデスの長寿モデル、ゲレンデヴァーゲン。初期のW460型を中心に、その魅力と注意点を英国編集部がご紹介します。

極めて耐久性に優れる多様なエンジン

メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲンに搭載されたエンジンは、どれもメンテナンスを怠らなければ極めて耐久性に優れる。そのかわり、走行距離は伸びがち。なかには長期間放置されたような例もあるため、過去の整備記録は可能な限り確かめたい。

手始めに、ボディとシャシーのサビ具合や、修復部分の状態を確認する。オフローダーとして、過去に激しく運転されてきた可能性がある。

メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型/1979〜1991年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型/1979〜1991年/英国仕様)

試乗時は、タイミングチェーンやベアリングからの異音や振動がないか確認したい。エンジンの始動性が悪い場合は、バキューム系統のエア漏れが原因の場合が多い。燃料アキュムレーターやポンプの状態も確かめたい部分。

オーバーヒートやガスケット抜けは、エンジンに深刻なダメージを与える可能性がある。その兆候がないか、ボンネットを開いて観察したい。ラジエーターが古いままなら、新しいものへ交換を検討したいところ。

特にスチールブロックにアルミヘッドというエンジンでは、ラジエーター内部が詰まりやすい。クーラントやエンジンオイル、燃料の漏れにも要注意。ターボチャージャーを搭載する例では、ブースト圧が正しく上昇するかもチェックポイントだ。

時代を超越したスクエアなボディライン

1990年代以降、Gクラスと呼ばれるようになってからはメカニズムが複雑になり、電子的な不具合の有無が重要さを増してくる。年式が新しくなるほど、すべてが正常に動くか確かめたいところ。不調な機能があるなら、修理の予算建てをしておきたい。

装備や仕様は多岐に渡り、英国の中古車市場を観察しても、同じ内容のゲレンデヴァーゲンはほぼ見つからないといっていい。同じ部品を見つけることが困難な場合もある。メルセデス・ベンツの工場には、装備を一覧にまとめたカードが1台毎に残されている。

メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型/1979〜1991年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型/1979〜1991年/英国仕様)

スクエアでシャープなボディラインは、ジープランドローバーと並んで、時代を超越した魅力がある。今回ご登場願った3ドアのショートボディは、特にオリジナルのデザインへ近く、味のあるクラシカルな雰囲気を漂わせている。

1991年以前のW460型ゲレンデヴァーゲンの場合、サビが維持するうえでの大きな課題。メルセデス・ベンツの修理部品は高品質ながら、基本的に価格は高い。それでも耐久性には優れ、状態が良ければ有能な走りでオーナーを満足させてくれるはずだ。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

排水ドレインの詰まりが原因で、バルクヘッドやヒーターファン周辺が錆びる。リアダンパーのトップマウンドやボディの四隅、フェンダーの内側、ドアの底面、ウインドウの縁、サンルーフなども腐食しがち。

基本的にシャシーは丈夫だが、オフロード走行で損傷すると腐食が始まることも。下回りはしっかり観察したい。燃料タンクや、固定用ストラップが錆びることもある。

エンジン

メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型/1979〜1991年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型/1979〜1991年/英国仕様)

エンジンの仕様は多様。ガソリンとディーゼルがあり、シングルカムの直列4気筒、5気筒、6気筒のほか、V型6気筒と8気筒、12気筒まで設定されてきた。メンテナンスを怠らなければ、基本的に耐久性は高い。

アルミ製ヘッドを持つユニットの場合は特に、オーバーヒートやシリンダーヘッドの歪み、亀裂などがないか観察する。ラジエータークーラントやエンジンオイル、燃料の漏れ、タイミングチェーンやベアリングからの異音も要注意。

トランスミッションとステアリング

試乗時にトランスミッションやトランスファー、デフなどから異音や振動がないか確かめる。正常なら静かで滑らかに動く。

高速道路を頻繁に走るなら、4速MTより5速MTの方がベター。4速ATもギア比があまり良くない。7速ATは、電子的な不具合を抱える場合がある。

インテリア

初期のチェック柄クロスは高耐久。オプションの装備状態を確かめる。サンルーフ周辺の状態も観察したい。

電気的な装備がすべて正常に動くか、丁寧に確かめたい。特にヒーターファンは要確認。オドメーターは16万km前後で故障する事が多い。

サスペンションとブレーキ

スプリングが折れていないか、ダンパーから液漏れしていないかなど、よく観察したい。ブレーキディスクや、タイヤの状態もチェックポイント。

記事に関わった人々

  • マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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