「勢力拡大中」のボルボ派生ブランド EX90の兄弟へ感動 ポールスター3へ試乗

公開 : 2023.12.30 19:05

2.6tを忘れる加速 ノーマルのままで運転が楽しい

リアタイヤの向きは変わらないため、想像以上に小回りが利くということはない。それでも、運転席からの視認性は悪くなく、少し長めのボンネットと相まって、ボディ四隅の感覚は掴みやすい。

右足へ力を込めると、2.6t前後ある車重を忘れさせる勢いで加速する。ステアリングの反応は目が覚めるほど鋭いが、違和感はなし。コーナー外側のリアタイヤへ多くパワーが伝わり、旋回を助ける。ハイレシオのラックが組まれているわけではない。

ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)
ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)

ステアリングホイールの重み付けもいい塩梅。パワーを掛けて、テールを軽く流せそうな自信が湧いてくる。

更に動力性能が高まる、パフォーマンス・パッケージも用意される。追加費用で、航続距離が30km短くなるかわりに、最高出力は490psから517psへ増強され、サスペンションが引き締められる。だが、期待ほどの活発さは感じられなかった。

ノーマルの3のままで、運転が楽しい。バッテリーEVの大型SUVでも。

快適性では、ライバルに及ばない様子。荒れた路面では、トントンと振動とノイズが伝わってくる。それでも、充分に洗練され居心地の良いSUVだといえる。

今回はオフロードコースも試すことができた。エアサスペンションにより、3は車高を60mm高くできる。

オンロード用のピレリPゼロ・タイヤを履いていながら、60%の急勾配をスルスル登り、石が露出した不整地も難なく走破。従来の高級SUVのオーナーなら、感動するような走破性だろう。

競争力の高い価格設定 感動を覚える仕上がり

3の英国での価格は、ベースグレードで7万9900ポンド(約1478万円)から。パフォーマンス・パッケージを選択すると、8万5500ポンド(約1582万円)へ上昇する。

主なライバル、iX xドライブ50は約10万3000ポンド(約1905万円)で、EQE 500 SUVは約10万9000ポンド(約2016万円)する。航続距離や急速充電能力などを考えれば、かなりの競争力ではないだろうか。

ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)
ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター・プロトタイプ(欧州仕様)

試乗車は最終プロトタイプではあったが、筆者は3へ感動を覚えた。ライバルとは異なる個性を備え、ドライバーズカーといえる電動SUVへ仕上がろうとしている。

全長4900mm、全幅1968mm、全高1614mmとボディサイズは大きく、狭い島国の一般道での取り回しは、実際に試してみるしかない。インフォテインメント・システムと、強みとされる運転支援システムも、まだ確認はできていない。

日常的に乗るクルマとした場合、それらは印象へ大きな影響を与える。とはいえ、それ以外は素晴らしい水準にあるようだ。

◯:ボディサイズを抜きにすれば、運転が楽しい 美しく広々としたインテリア プレミアムブランドの競合モデルよりお手頃
△:その競合モデルより豪華さでは劣る ボルボEX90と共有するとわかるインテリア

ポールスター3 ロングレンジ・デュアルモニター(欧州仕様)のスペック

英国価格:7万9900ポンド(約1478万円)
全長:4900mm
全幅:1968mm
全高:1614mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:5.0秒
航続距離:609km
電費:4.6-4.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2584-2670kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:107kWh(実容量)
急速充電能力:250kW
最高出力:490ps(システム総合)
最大トルク:85.5kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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