結局「コスパ1番」のEVは? ボルボと内側を共有:スマート#1 オーナーを満たす:ヴォグゾール(オペル)・アストラ お手頃EV 12台比較(1)

公開 : 2024.04.15 19:05

少し掴みどころのない電動クロスオーバー

実際に走り出すと、後輪駆動で回頭生は良い。少し気張るとテールスライドも誘え、運転自体は退屈ではない。とはいえ、楽しいとまではいえないだろう。

ステアリングホイールは軽く無感触。アクセルレスポンスも線形的ではなく、コーナーでのライン調整を助けてくれるわけではない。同じプラットフォームから、一貫した反応と操る楽しさが引き出されたEX30とは明らかに違う。

スマート#1 プレミアム(英国仕様)
スマート#1 プレミアム(英国仕様)

とはいえ、#1は今回の12台に含まれた。4万ポンド(約756万円)以下でオススメできる1台に数えられることは間違いない。少し掴みどころのない電動クロスオーバーだとしても。

スマートには、確立されたブランド・イメージが存在した。それをバッテリーEVへ発展させる機会が、メルセデス・ベンツにはあったのではないかと考えてしまう。

11位:ヴォグゾールオペル)・アストラ・エレクトリック オーナーを満たす

ヴォグゾール(オペル)・アストラは、4万ポンド(約756万円)を切る電動ハッチバックとして2023年に登場。デザイン・グレードなら充実装備で3万7795ポンド(約714万円)と、フォルクスワーゲンID.3などの好敵手になっている。

今回はお高めのGSグレードだったが、見やすいメーター用モニターとインフォテインメント用タッチモニターは標準。高級化を意識した、インテリアのコダワリも強い。それでも、本来の魅力はエネルギー効率と実直さにあると思う。

手前からヴォグゾール(オペル)・アストラ・エレクトリック GSと、ジープ・アベンジャー・サミット
手前からヴォグゾール(オペル)・アストラ・エレクトリック GSと、ジープアベンジャー・サミット

スタイリングは、全高が低めでまとまりが良い。電気モーター版の車重は、プラグイン・ハイブリッド版より少し重いだけ。155psと最高出力は控えめで、0-100km/h加速は9.2秒と穏やかだが、電費効率は6.7km/kWhとライバルを凌駕する。

駆動用バッテリーは51.5kWhと大きくないが、航続距離は416km。自慢できる数字ではないとしても、充分納得できる距離を走れる。

動的特性も輝く部分。アクセルやブレーキの反応は自然で、運転しやすい。乗り心地はフラットでしなやか。英国の傷んだアスファルトにも、見事に対応してみせる。

ステアリングホイールの重み付けは妥当で、反応も好ましい。不足ないグリップ力を活かし、小さなボディーロールで気持ち良くコーナーを駆け抜けられる。

それでも、アストラ・エレクトリックは11位に留まった。やや狭めのリアシートと、価格に対する装備内容で順位を下げている。今回の12台の実力の高さを示しているが、オーナーを満足させる電動ハッチバックではある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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