存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 長期テスト(1) EV特有の制限を楽しさは上回る?

公開 : 2024.07.13 09:45

アバルト・フレーバーの効いた500e 高めの価格に目を引くスタイリング 公道での走りの興奮度はいかに? 本物の電動ホットハッチと呼べるのか、英国編集部が長期テストで確認

初回 都市部の暮らしに丁度いい小柄なボディ

小さな電動ハッチバックが、長期テストで筆者のところにやってきたのは、自宅の引っ越しの2週間前だった。同じバッテリーEVでも、フォルクスワーゲンID.バズなら、とても役立ったのに。

テールゲートとスライドドアを開き、フロアのパネルを取り外し、リアシートをフラットに畳めば、アパートにある荷物の半分近くは積めただろう。ワンボックスカーをレンタルする必要はなかった。植木鉢を倒したり、新居と何度も往復することもなかった。

アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)

アバルト500eは、シトロエン・アミなどのマイクロカーを除いて、英国で購入できるバッテリーEVとしては最小の1台。4シーターだが2ドアで、荷室も狭い。そのおかげで、パートナーと断捨離するべきか、相談する機会にはなったけれど。

もちろん、小さなクルマにも良い部分は沢山ある。説明するまでもなく、小柄なボディは都市部での暮らしに丁度いい。

アパート前の狭い駐車スペースへ余裕をもって収まり、入り組んだ路地にスルスルと入っていける。ヒースロー空港の混雑したターミナルビル付近でも、気を使う頻度は減る。

都心に住まうクルマ好きは、以前から相反することを天秤にかけてきた。車内は多少窮屈でも、扱いやすい小さなモデルにするべきか。高速道路が得意で、郊外の一般道も快適に飛ばせる、より大きいモデルにするべきか。実用性は別として。

この2つの条件を、同時に満たすモデルは多くない。しかし、アバルト500eなら可能性はありそうだ。

短めの航続距離 595を模した排気音

サスペンションは減衰特性が良く、乗り心地は素晴らしい。小さな交差点をくるりと旋回し、キビキビと走り、市街地への通勤にぴったり。以前に、グレートブリテン島北東部のノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へ向かった時は、素晴らしい走りも披露してくれた。

ただし500eで問題になるのが、交通量の少ない、気持ちいい道まで到達すること自体。高速道路を数10km北上するだけで、42kWhと小さい駆動用バッテリーの15%くらいを消費してしまう。

アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)

ロンドンの北に広がるドライブルートを目指す場合、向かった先での充電を考慮する必要がある。急速充電能力は85kWで、最近のモデルとしては速いといえず、待ち時間も短くない。これからの長期テストの、足を引っ張りそうなことの1つといえる。

そんな航続距離とは別に、初めのうちに評価しておきたい機能がある。このアバルトでは、人工的なエンジン音を再生できるのだ。運転体験の充足度を高めるため、ガソリンエンジンで走るアバルト595の排気音を模したサウンドを聞くことができる。

これは、人によって好き嫌いが明確にわかれるだろう。耳障りでうるさいと感じる人もいれば、楽しいと感じる人もいるはず。筆者は嫌いではないが、考えが変わるまでオフにすることにした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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