【じたばたしない】トヨタ決算報告でトランプ関税影響に言及!国内生産300万台は堅持

公開 : 2025.05.12 11:05  更新 : 2025.05.13 07:37

トヨタが2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算報告を行いました。営業収益は、前期から2兆9413億円増えて48兆367億円。トヨタ自身がこれまで持っていた日本企業としての過去最高額を更新しています。桃田健史による解説と分析です。

営業収益は4633億円増え、営業利益は9955億円減

トヨタが2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算報告を行った。

営業収益は、前期から2兆9413億円増えて48兆367億円。トヨタ自身がこれまで持っていた日本企業としての過去最高額を更新した。

トヨタが2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算報告を行った(画像は生配信されたYouTubeより)。
トヨタが2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算報告を行った(画像は生配信されたYouTubeより)。    トヨタ自動車

営業利益は5573億円減って4兆7955億円。

要因としては、台数減や、アメリカのインディアナ工場での生産停止などが影響した。一方で、アメリカでの販売奨励金(インセンティブ)を抑制するなどして、改善努力を積み上げたかたちだ。

連結販売台数は、前期から8万1000台減の936万2000台。

仕向け別では、日本、北米、欧州が前期とほぼ同じか微減となり、アジアで微増。台数減は、日本での認証不正問題などが影響した。トヨタ&レクサスの販売台数は1027万4000台。

一方で、電動車は大きく伸びた。電気自動車(BEV)は倍増し、ハイブリッドも2割以上の増加。

ただし、燃料電池車については燃料である水素の全体需要が伸びないことなどが要因となり、3分の1まで急減速している。

次に、2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の見通しだ。

連結販売台数は、日本、北米、欧州、アジアのそれぞれで伸びて980万台。トヨタ&レクサスの販売台数は1040万台とした。国内生産300万台は堅持する。

それに伴い、営業収益は4633億円増えて48兆5000億円。

ただし、営業利益は9955億円減って、3兆8000億円とした。その理由とは……。

トランプ関税含めて世界市場は先行き不透明

いわゆるトランプ関税については、日米政府間の通商交渉が続いている段階。

その上で、4月と5月の2ヵ月分のトランプ関税の影響を1800億円とした。筆者として単純計算すれば、月900億円で、これが仮に1年続くとすれば9900億円に及ぶ。

トヨタは、未来のための足場固めの時期だと強調する(画像は生配信されたYouTubeより)。
トヨタは、未来のための足場固めの時期だと強調する(画像は生配信されたYouTubeより)。    トヨタ自動車

ただし、トランプ関税は日米間のみに影響するのではなく、アメリカの隣国であるカナダとメキシコからアメリカへの輸出分、また欧州や中国を含めた複合的な影響が発生する可能性も高い。

そのほか、ロシアと中国が外交で急接近するなど、世界の政治、経済の行方を見通すのは難しい。

こうした状況で、トヨタ経営陣が強調したのは『じたばたしない。いまこそ、足場固めをしっかりする』ことだ。

トヨタは2009年のリーマンショック時に、大幅赤字に転落した苦い経験がある。それ以降、財務面から事業のあり方を大きく見直し、単純に台数増を追うのではなく『稼ぐ力』を重視する収益構造改革を進めてきた。

収益の変動が大きい新車中心から、収益を安定的に拡大するモビリティカンパニーへの移行だ。具体的には、新車販売後のバリューチェーンで収益を増やす。保有台数1.5億台の強みを活かして、メンテナンスサービスの拡充、コネクテッド技術の活用、中古車や用品事業の拡大だ。一例が、KINTOにおける様々なサービス開発である。

そのために、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の技術開発や、ウーブンシティの活用を強化する。トヨタの次世代事業化に期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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