メルセデス・ベンツ新型『CLA with EQテクノロジー』 約900万円から欧州発売 高効率を実現

公開 : 2025.05.12 18:45

メルセデス・ベンツは新型CLAのEVモデルの受注を欧州で開始しました。優れた空力設計と高効率パワートレインにより、欧州最長クラスの航続距離792kmを実現。数か月以内にハイブリッドモデルも導入予定です。

エネルギー効率は8km/kWh超

メルセデス・ベンツは新型EVセダン『CLA』を欧州で発売した。市販EVとして最高クラスの航続距離と効率性を備え、英国価格は4万5615 ポンド(約890万円)から。

今夏から納車開始予定で、エントリーモデルの『CLA 250+ with EQテクノロジー』は1回の充電で最大792kmの走行が可能とされ、高速道路のみでも約690km走行できるという。

メルセデス・ベンツCLA
メルセデス・ベンツCLA    メルセデス・ベンツ

これは、英国で発売されているすべてのEVを凌駕する数値だ。メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルであるEQS 450+(118kWhバッテリーで774km)すらも上回る。

EQS 450+の価格は11万2610ポンド(約2190万円)と、CLA EQの発売価格よりも6万5000ポンド(約1270万円)も高い。CLA EQの他のグレードは、『AMGライン・エディション』が4万9375ポンド(約960万円)、最上位グレードの『AMGライン・プレミアムエディション』が5万1770ポンド(約1010万円)となっている。

この驚異的な航続距離は、エネルギー消費を最小限に抑えることで達成したものだ。搭載されているバッテリーはニッケル・マンガン・コバルト(NMC)で、その容量は比較的少ない85kWhだ。

つまり、CLA EQは8km/kWh以上のエネルギー消費効率を達成していることになる。これは、多くのメーカーが次世代EVにおける目標ラインに定めているような数値である。

ただし、印象的な航続距離を誇りながらも、CLA EQは欧州で一般的な400V DC充電器に対応していないため、家庭用のAC充電器か、新世代の800V DCの公共充電ステーションを利用することになる。なお、欧州の一部地域では400V対応の電圧ブースターが用意されるという報道もあるが、日本仕様の詳細はまだ確認されていない。

空気抵抗の少ないボディ 低価格版も予定

CLA EQの優れた航続距離は、その空力設計によるところが大きい。ボディサイズは全長4723mm、全幅1855mm、全高1468mmと、先代モデルよりも大型化(長さ35mm、幅25mm、高さ22mm増加)したにもかかわらず、前面投影面積を最小限に抑え、空気の流れをスムーズにするための工夫が凝らされている。

例えば、車輪は先代よりもホイールアーチの内側に配置されている。フロントバンパーの小さな吸気口(と対応するリアの排気口)がボディの隅の空気の流れを整え、アルミホイールもフラッシュフェイスデザインにより乱流を抑えている。

メルセデス・ベンツCLA
メルセデス・ベンツCLA    メルセデス・ベンツ

こうした工夫の結果、空気抵抗係数(Cd値)は0.21となり、EQS(0.20)よりわずかに大きいが、テスラモデル3(0.22)よりも優れている。

リアマウントの新しい永久磁石モーターも、効率性において重要な役割を果たしている。軽量なシリコンカーバイドインバーターを使用し、コンパクトなパッケージで高出力を実現した。また、磁石をダブルのV字型に配置して磁場を集中させることで、トルク密度が向上しているという。

さらに、このモーターには、通常の1段の減速ギアではなく、ポルシェタイカンと同様の2段トランスミッションが搭載されている。1段目のギア比は短く(11:1)、市街地走行での効率性と発進加速力を高めたものとなっており、2段目のギア比はかなり長く(5:1)、高速巡航時のエネルギー消費を抑えている。

エントリーモデルのCLA 250+は最高出力272psを発生し、0-100km/h加速は6.7秒とされる。

四輪駆動の『CLA 350 4マティック with EQテクノロジー』では、フロントアクスルに1段ギア付きの108psのモーターを追加し、合計出力は354psとなる。これにより、0-100km/h加速は4.9秒に短縮され、20年前のV8エンジン搭載のC 55 AMGよりも直線加速では速くなった。

フロントモーターは、不要な時にはアクスルから切り離され、摩擦によるエネルギー損失を90%削減する。これにより、四輪駆動のCLAは最大770kmの航続距離を実現した。他の市販EVと比較しても、後輪駆動バージョンとの差は小さい。

ブレーキは主にモーターの回生効果(最大200kWの制動力を実現)に頼っており、可能な限りバッテリーの充電残量を維持する働きだ。

CLAは800Vの電気アーキテクチャーにより、最大320kWの急速充電が可能であり、わずか10分の充電で325kmを走行できる。

85kWhのNMCバッテリーに加え、58kWhのリチウム鉄リン酸塩(LFP)バッテリーも間もなくラインナップに登場する予定だ。価格が大幅に値下げされることは確実だが、航続距離は480km程度にとどまるだろう。

また、高性能バージョンの『AMG CLA 45(仮称)』も登場予定であることが明らかになっている。英国企業ヤサ(Yasa)が開発した2基のアキシャルフラックスモーターで500ps以上の出力を発揮し、シャシーもスポーティなセットアップとなる見込みだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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