A110の5座SUV版? アルピーヌA390 プロトタイプ 想像超えの軽快感 総合出力は400-500psか

公開 : 2025.05.12 19:05

復活アルピーヌの第3弾、電動クロスオーバーのA390 3モーターで400-500psか ブレーキはバイワイヤ制御 A110を彷彿とさせるとまではいえない? 想像以上の軽快感 UK編集部が試作車へ試乗

駆動用モーター3基の電動クロスオーバー

正式に復活したアルピーヌは、成長を止めない。素晴らしいミドシップ・スポーツのA110で話題を集め、バッテリーEVのA290で電動ホットハッチを我々に指し示した。

第3弾となるのが、A390。家族全員を乗せて移動できる、電動SUVだ。駆動用バッテリーをフロア下に積む、完全に独自開発された正真正銘のアルピーヌとなる。

アルピーヌA390 コンセプト
アルピーヌA390 コンセプト

駆動用モーターは前に1基、後ろに2基の計3基。トルクベクタリング機能が有効なことは、説明不要だろう。カーブでは、内側のタイヤの回転を抑えつつ、外側へパワーを掛けることで、鋭い旋回を可能としている。エンジンモデルでは難しい制御といえる。

技術的にはルノー・セニック E-テックとの繋がりが強いものの、ホイールベースが異なり、ボディやバッテリーも別物。正式発表は2026年の予定で、今回はミシュランが保有するフランス・ラドゥーのテストコースで、試作車を味見させていただいた。

6角形のステアリングホイールはA290と同じ

アルピーヌは、古くから軽量化を重んじてきた。しかし、バッテリーEVのクロスオーバーは軽く仕上げることが難しい。独自のパワートレインと電子制御技術で、A110のような軽快さの再現が狙われたようだ。

後方2基のモーターは背中合わせに並び、左右のタイヤをクラッチで制御する、大きなユニット1基より高さが抑えられている。タイヤのサイズは、前後で同じ。リアトレッドを広げることで、トラクションと安定性を担保しながら、低価格化を目指したという。

アルピーヌA390(プロトタイプ)
アルピーヌA390(プロトタイプ)

四輪操舵システムは装備されず、サスペンションはアダプティブではない。自然なフィーリングを目指しつつ、ここでもコストが抑えられている。駆動用バッテリーの容量は、まだ公表されていない。

ボディだけでなく、インテリアも偽装されていたが、A290と近いテイストになるのではないだろうか。6角形に近いステアリングホイールは、A290と同じだ。

400psから500psの間? ブレーキはバイワイヤ

まだ秘密の最高出力は、400psから500psの間だと予想する。明らかに速いが、息が詰まるほどではない。スポーティなクロスオーバーとして、丁度いい加減だろう。

アクセルペダルの反応は線形的で、ステアリングホイールには回生ブレーキの効きを調整するロータリーダイヤル。ブレーキはバイワイヤで制御され、ペダルの踏み始めは若干スポンジーに思えたが、力を込めると頼もしい制動力が返ってきた。

アルピーヌA390(プロトタイプ)
アルピーヌA390(プロトタイプ)

試作車には非実装だったが、アルパイン・ドライブサウンドと呼ばれる、A110の吸気音に着想を得た合成サウンドを、車内で楽しめるらしい。だが、ヒョンデ・アイオニック 5 Nのような、合成のエンジン音やフェイクの変速までは再現されていない。

それは、アルピーヌの哲学に反すると判断された。アイオニック 5 Nでの体験は評判が良いから、実装されても良いかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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