極めて限られた人の「ゴルフ」 ブガッティ・シロン(2) 普通に運転できることが最大の偉業

公開 : 2025.06.03 19:07

あらゆる面でヴェイロンを上回ることが掲げられたシロン 8.0L W16の4ターボ 最大トルク162.8kg-m 0-300km/h加速13.6秒 ゴルフのように運転できるハイパーカー UK編集部が試乗

0-300km/h加速13.6秒 速さに言葉を失う

ブガッティ・シロンは、1500psで420km/hを掲げるハイパーカーだが、発進させると普通ぶりに驚く。8.0Lエンジンで全幅が2mを超える、フォルクスワーゲン・ゴルフだと表現したくなる。これは皮肉ではなく、圧巻の偉業といえる。

今回は通常のシロンとシロン・スーパースポーツを試乗したが、どちらも、ある程度自由度の高い公道で。ブレーキを踏みながらシフトレバーをDに傾ければ、発進準備は完了。完全に動力性能を試せたわけではないが、素のシロンでも速さには言葉を失う。

ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)
ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)

ポルシェタイカン・ターボS級に、即時的な加速ではない。低域トルクを電気モーターが補う、ハイブリッドのマクラーレンとも異なる。大きく息を吸い込み、ターボブーストが高まるまでにラグがある。1秒弱待つと、轟音とともに速度の急上昇が始まる。

通常のシロンでも、0-100km/hを2.5秒、0-300km/h加速を13.6秒でこなす。シロン・スーパースポーツは2.4秒と12.1秒へ縮める。仮に440km/hで8分間走り続けると、ガソリンタンクは空になるそうだ。

420km/h以上でも加速する余力 燃費は4.7km/L

エンジン音は、特急列車が通過するホームへ立っているようなボリューム。魂を震わせるほどではないものの、高額なメカニズムが奮い立つという、感動を伴う。目を疑う速さで320km/hへ到達するが、安定性は揺るがない。

ブガッティのテストドライバー、アンディ・ウォレス氏の話では、420km/hに達しても、まだまだ加速する余力はあるらしい。380km/hのリミッターに当たりアクセルペダルを戻すと、ブーストが抜ける巨大な響き。気張っていた筆者も、深呼吸した。

ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)
ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)

シロンに強力なエンジンを積み、ヴェイロン以上の速度を与えることは、ブガッティにとって難しいタスクではなかったのかもしれない。日産GT-Rのエンジンを、2000馬力へチューニングするように。

ご参考までに、シロン・スーパースポーツの燃費は、カタログ値で4.7km/L。空力特性に優れるため、高めのギアで高速道路を巡航すれば、もう少し伸びる可能性はある。

乗り心地はポルシェ911 GT3並みに硬め

ドライブモードには、ノーマルのEBとハイウェイ、ハンドリングという3種類が用意されている。ハイウェイとハンドリングでは、アダプティブダンパーの制御が引き締まり、車高が僅かに落ちる。

市街地を走るなら、EBモードが正解。ポルシェ911 GT3並みにではあるが、路面からの入力を吸収してくれる。乗り心地は基本的に硬めなぶん、グリップ力は凄まじく、姿勢制御に無駄はない。

ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)
ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)

ステアリングは、ハンドリング・モード時で重すぎるようだったが、それ以外は良好。セルフセンタリング性も自然だ。直進時の安定性は素晴らしく、レシオも丁度いい。充分ダイレクトで、情報量も電動パワステとしては悪くない。ゴルフ Rのように。

ただし480km/hへ迫ると、操縦性は見違えて悪化するとのこと。タイヤがジャイロスコープのように超高速で回転し、反応が正確ではなくなるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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