運転の楽しさと速さは別物 ND型 マツダ・ロードスター(2) 新鮮な空気で深呼吸するかのよう

公開 : 2025.06.04 19:10

時代を超越したコンセプトを継ぐ、ND型ロードスター 車重は約1.0t 無駄ない車内空間が新鮮 8.8インチ・モニター獲得 颯爽と回る自然吸気エンジン きめ細やかな操縦性 UK編集部が試乗

7500rpmまで颯爽と回る自然吸気エンジン

4代目のND型マツダMX-5(ロードスター)に載る自然吸気エンジンは、排気量を問わず格別。7500rpmまで颯爽と回転するユニットは、高級なポルシェを除いて、他に思い浮かばない。

2019年に、従来の158psから184psへ強化された2.0L 4気筒は、グレートブリテン島の環境へ理想的。一方で1.5L 4気筒は131psを発揮し、パワフルではないとしても、0-100km/h加速は8.3秒。むしろ積極的に操れ、ドライバーの気持ちを鷲掴みにする。

マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)

アイドリング時から、排気音が気持ちを刺激してくる。アクセルペダルを傾ければ、鋭敏にタコメーターの針が回る。ショートなギア比の6速MTも、緻密な機械を操る実感を強める。ステアリングホイールを切り込む前から、すっかり惹き込まれてしまう。

発進加速は力強く、更に右足を傾ければリニアにトルクが発生。完璧なレスポンスで、速度上昇を引き出せる。日常的に走る道路でも、見事な一体感で喜びに浸れる。運転免許の点数が、削られる心配も少ない。楽しさと速さは、別物だとわかる。

シンプルなメカが生むきめ細やかな操縦性

ロードスター最大の魅力が、シンプルなメカニズムが生む、きめ細やかと表現できる操縦性。若干の癖はあるものの、現実的な価格で購入できる、ベスト・スポーツカーの1台であることは間違いない。初代NA型が備えた、流暢さには及ばないとしても。

路面を確かに捉える頼もしさ、秀抜なシャシーバランス、ミリ単位のアクセルレスポンスなどは、まさにその証。精緻さではケータハムロータスに届かないが、幅が195のタイヤは理想的なグリップ力を発揮し、驚くほど滑らかにコーナリングできる。

マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)

電動パワーステアリングは、若干軽すぎるかもしれないが、手のひらには鮮明にタイヤの状況が伝わる。スライド状態からのリカバリーも、至って滑らかにこなす。

サスペンションはソフト側。細かな凹凸を通過すると、少し安定性へ陰りが出る。オープンボディが故の高くはないボディ剛性の影響で、足回りが本来の能力を発揮できていないのだろう。2.0Lエンジン版では、入力次第でボディの共振も感取された。

感心するほど快適な乗り心地 現実的な好燃費

そのかわり、サスペンションは充分なストロークを備え、乗り心地はしなやか。鋭い回頭性と、低くない安定感は、理想的な重量配分や重心位置、FRレイアウトがもたらすもの。得られる興奮の高さを考えると、感心するほど快適といえる。

走行音は大きめ。約110km/h時の車内ノイズは、75dBAだった。リトラクタブル・ハードトップのRFの方が、高速道路でのクルージングには向いている。

マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)

小柄・軽量なボディだから、好燃費も期待できる。1.5Lエンジンで17.5km/L、2.0Lで15.0km/L程度を、現実的に得られるだろう。山道を相当楽しんでも、10.0km/Lを切ることは殆どないはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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