本気なら異次元の加速 ポルシェ・タイカン・ターボGT(2) 極限的には物足りない? 進化の余地とは
公開 : 2025.06.27 19:10
1109psのキング、タイカン・ターボGT フォーミュラE譲りのパワー制御ソフトで0-100km/h 2.2秒 繊細なモーター制御に感心 精緻な姿勢制御と安定性 究極的な進化に余地? UK編集部が試乗
もくじ
ー繊細なモーター制御に感心 本気なら異次元
ー精緻な姿勢制御と安定性の高さに唸る
ー猛烈な速さに驚愕 極限的には物足りない?
ー運転体験を高次元の喜びへ昇華させる余地
ーポルシェ・タイカン・ターボGT ヴァイザッハ・パッケージ(英国仕様)のスペック
繊細なモーター制御に感心 本気なら異次元
オーバーブースト時に1109psを叶えた、ポルシェ・タイカン・ターボGT。近年のハイパワーEVのように、少し誇張されたような、苦痛なほどの加速は披露しない。V12エンジンを操るような、味わい深さを伴わないことも事実だが。
公道では、繊細な駆動用モーターの制御に感心する。特に低速域で、アクセルペダルの角度に対する反応が見事。暴力的なパワーも放出できるが、意図しなければ、即時的でも横暴さは皆無。ドライバーが求めたぶんだけ、正確に引き出せる。

本気を望めば、動力性能は異次元。ブラックホールへ吸い込まれるように、陶酔させる勢いで速度は上昇する。ローンチコントロールを機能させると、1109psに息を飲む。体感的には、ブガッティ・シロンの鋭さと遠くは違わない。
発進から数秒後、ヘッドレストから頭を浮かせられる頃には、160km/h超。そこから先も勢いは衰えない。リアアクスルの2速ATがシフトアップした瞬間は、合成音の変化で気付けるが、パワーデリバリーは途切れない。
精緻な姿勢制御と安定性の高さに唸る
ポルシェ・アクティブライド・アダプティブダンパーが標準で、快適寄りのモードでも、前後左右のボディの傾きはタイト。ステアリングやペダルだけでなく、シャシー全体を通じて、一体感が追求されたことを実感できる。
速度域を問わず、操縦性は終始滑らか。アスファルトの凹凸は見事にいなされ、ドライバーへ殆ど存在を感じさせない。ホイールは21インチで、標準タイヤはピレリPゼロ。グリップ力は凄まじい。

高速道路での精緻な姿勢制御と、安定性の高さには、圧巻の加速力と同じくらい唸らされる。最初の数100mで、ポルシェの本物の「GT」に乗った感覚を得られると、ある同僚は口にした。ヴァイザッハ・パッケージのフィーリングは、悪魔的に巧妙だ。
鍵を握っているのはステアリング。手応えは理想的で、情報量も濃密。路面状態に加えて、タイヤの負荷まで、他のブランドでは真似できない明瞭さで感じ取れる。フラットな乗り心地も金字塔。路面へしなやかに追従し、しっかり捉える。
猛烈な速さに驚愕 極限的には物足りない?
サーキットでは、猛烈な速さに驚愕できる。回転数を気にする必要はなく、ギアを選ぶ必要もないが。ひたすらアクセルペダルを蹴飛ばすか、ブレーキペダルを蹴飛ばすか。コーナー毎に変化する景色を、周辺視野へ収めながら。
スタビリティ・コントロールの急激な介入もない。クルマに操られている感覚なしに、存分に速さを探求できる。だが、しばらく攻め込んで限界領域へ迫れるようになると、フロントのPゼロはグリップが不足気味に思えてくる。

コース上で真価を引き出すなら、ピレリ・トロフェオRSがベター。コーナーでの速度と反応へ、劇的な改善が現れる。ブレーキングやステアリングのフィードバックにも。
ただし極限的には、操縦性のバランスと姿勢制御で、ポルシェのGTとして若干の物足りなさがあることも事実。タイヤやシャシーの限界を超えた時、さらなる充足感が待っているわけではない。