アルピーヌ、高級ブランドの地位確立へ邁進 20年で「ポルシェの真のライバル」目指す

公開 : 2025.06.06 07:45

70年の歴史とモータースポーツ

アルピーヌは「夢のガレージ」としてモデルラインナップの構築を目指しており、各モデルはいずれも大量生産されることはない。同社は具体的な目標生産台数を明言していないが、A390がA110と同じ少量生産のディエップ工場で組み立てられることを考慮すると、年間で最大1万2000台程度となるだろう。

A290は、ルノーの広大なエレクトリシティ工場(ドゥエ)に生産ラインを確保しており、価格は3万3500ポンド(約650万円)からと比較的手頃な設定となっている。これに対し、A390の推定価格は6万ポンド(約1170万円)だ。

モータースポーツとのつながりを強調し、スポーティなブランドイメージの構築を目指す。
モータースポーツとのつながりを強調し、スポーティなブランドイメージの構築を目指す。

しかし、本質的には、アルピーヌは現在「我々に気付いてほしい」という段階にある。高級車の買い手の目を引くための苦しいブランド構築の時期であり、欧州ではBMWメルセデス・ベンツアウディが圧倒的なシェアを占め、ランドローバーボルボなども名を連ねる。

デ・メオ氏はマーケティング面でも手を抜いていない。ルノーのF1チームをアルピーヌに改名し、成績不振が続く中での売却の噂を否定。さらにハイパーカーのA424を投入し、アルピーヌを世界耐久選手権(WEC)の主要プレイヤーに据えている。「アルピーヌの核心は競技活動です」と同氏は言う。

レースとの繋がりを強調するものとして、最高出力1000psのハイブリッドハイパーカーが2028年ごろに登場する。このモデルは、ヴィリー=シャティヨンにあるハイパーテック・アルピーヌR&D(F1エンジン工場)が開発したV6エンジンを採用する予定だ。

ハイパーテック部門は、自動車メーカーが長らく実現に苦労してきたモータースポーツとロードカーの共通点を、より積極的に追求する役割を担っている。

こうした取り組みにより、アルピーヌはドイツのプレミアムブランドが販売する実用重視のクルマとは一線を画す、スポーティなプレミアムブランドという地位を目指している。

「わたし達は、現時点では空白の中間領域にいます」と、製品責任者のソヴァニー・アン氏はAUTOCARの取材で語っている。

APPは内燃エンジンも搭載可能で、ブランドがEVだけにとらわれているという印象は避けたい考えだ。

「EVを販売しているのではなく、スポーティなクルマ、情熱的なクルマ、高級なクルマを販売しているのです」と、クリーフ氏は強調する。

重要なのは、アルピーヌが70年の歴史とつながる糸を守っていることだ。中国の新興ブランドにはないストーリーが、アルピーヌにはある。

デ・メオ氏は、「アルピーヌの創業当初の姿勢は、少ないリソースでより多くのことを成し遂げるというものでした。それはまさに今の時代精神に合っています」と述べた。

デ・メオ氏はアルピーヌを、工場、2000人以上の従業員、159のディーラー、F1チーム、専用の開発センター、象徴的なモデル、そしてバックストーリーを持つ「正真正銘の」自動車メーカーだと表現している。

一方、クリーフ氏は、2022年に発表した、2030年までに利益率10%を達成するという目標を繰り返し掲げている。

ルノーは以前、アルピーヌをグループ内の独立企業として運営し、独自の損益計算書を作成するなどして、最終的には株式上場を目指すと約束していた。しかし、自動車関連株に対する投資家の関心は2022年とは大きく異なっており、好調な業績にかかわらず、あらゆる手段を講じなければならない。

ルノーの技術を活かして2桁の利益率を実現できるプレミアムブランドを傘下に収めることは、グループにとって計り知れない恩恵をもたらすだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニック・ギブス

    Nick Gibbs

    英国編集部ビジネス担当記者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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