EV普及で注目されるタイヤの摩耗問題 需要は高まる傾向、メーカーも焦点

公開 : 2025.06.25 18:45

英国では電動化に伴い、EV専用タイヤの市場規模の拡大が見込まれます。そこで注目を集めるのが「摩耗」の問題で、従来のエンジン車と比べて減りが速いと言われています。メーカーや販売会社の声を集めました。

市場規模の拡大に期待集まる

英国のタイヤメーカーであるEnso社は、テスラモデル3モデルY、およびジャガーIペイス向けの新しいタイヤを発表した。同社はこれまで商用EV向けのタイヤを販売してきたが、乗用EV向けは今回が初めてだ。

現在、英国の道路を走るEVは150万台以上あり、今年はさらに45万台の販売が見込まれている。乗用車向けのタイヤは2022年時点で4000万本が販売され、その市場規模は約23億ポンド(約4500億円)に達するが、2030年までに約39億ポンド(約7700億円)に拡大すると予想されている。

EVのタイヤは摩耗が比較的速いと言われている。
EVのタイヤは摩耗が比較的速いと言われている。

ミシュランやコンチネンタルなどの大手企業に比べ、Ensoは小規模な企業だが、直接販売や、タイヤの摩耗率の改善による粒子状物質排出量の削減といった技術革新に重点を置いた取り組みにより、その規模以上の成果を上げている。

「EVの重量はタイヤに大きな影響を与えます」と、Ensoの創設者兼CEOであるグンラウガー・エルレンソン氏は言う。

「さらに、トルクが大きく、市街地走行といった使用状況も影響しています。タイヤは摩耗するものですが、当社は優れた原材料と構造、および優れた “レシピ” を使用し、現場から継続的にデータを収集することで、摩耗率を低減しています」

業界各社の声

タイヤの摩耗と転がり抵抗、ウェットおよびドライ路面でのハンドリング性能、そして騒音レベル(ロードノイズ)とのバランスを取ることが、Ensoをはじめとするタイヤメーカーが直面している課題の1つだ。

ファルケンタイヤのタイヤ開発部門ジェネラルマネージャー、ヤープ・レーンデルツェ氏は、「現在、タイヤは以前よりもはるかに重い車両荷重に対応しています。以前はタイヤの荷重容量の50%しか使われていませんでしたが、現在は70~80%に達しているため、わたし達はタイヤの耐久性向上に焦点を当てています」と述べている。

Enso社のEV専用タイヤ
Enso社のEV専用タイヤ

ミシュランは、EVのタイヤ摩耗が内燃機関車(ICE)よりも20%速いと発表している。

英国の自動車整備会社であるKwik-Fit社によると、タイヤへの負担が特に大きいのはテスラ車で、シトロエンメルセデス・ベンツBMWのモデルも平均を上回るペースでタイヤ交換が必要だという。

EnsoのEV用タイヤは、一応ICE車にも使用可能だが、EV専用として販売されている。しかし、市販タイヤの多くは、EV、ハイブリッド車、ICE車にも適していると宣伝されている。

英国のタイヤ販売会社であるミッチェルデバーのシニアマーケティングマネージャー、クリス・ステインクリフ氏は次のように述べた。

「EV用タイヤ市場がまだ小さいため、メーカーとしてはすべての用途に対応するタイヤを設計したいという考えがあります。EV用タイヤには、サイドウォールの強化、低転がり抵抗、ロードノイズの提言、優れた耐摩耗性能が必須ですが、大量生産によりこれらの性能をすべて備えつつ、手頃な価格を実現するのです」

「いずれにせよ、どのタイヤも、装着されるクルマの種類に関わらず、良い評価を得るためにはこれらの目標を満たさなければなりません。また、1つのタイヤですべてに対応できると、消費者にとっても便利です。当社のフィッティングセンターには、互換性のないICE用タイヤを装着したEVが、タイヤが完全に摩耗し切った状態で持ち込まれることがあります」

「デュアルパーパスタイヤのトレンドが広まりつつあり、中価格帯の製品も増えてきています。消費者もデュアルパーパスタイヤについて知識を深め、需要が高まっています」

記事に関わった人々

  • ジョン・エバンス

    John Evans

    役職:特派員
    フリーランスのジャーナリストで、AUTOCAR英国編集部の元スタッフ。姉妹誌『What Car?』誌の副編集長や『Practical Caravan誌』の編集長なども歴任した。元自動車ディーラーの営業マンという経験を活かし、新車・中古車市場や消費者問題について幅広く取り扱っている。近年は、これらのニュースや特集記事に加え、アイスクリーム・ワゴンのDIY方法から放置車両の探索まで、さまざまな記事を寄稿している。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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