走りは「らしく」ない? 新型 マツダ6e(2) CX-60に近い乗り心地 中国由来は隠せず

公開 : 2025.08.06 19:10

マツダが必要に迫られた、長安とのパートナーシップ 航続は552kmか479km 高級感ある内装 リニアではないアクセルの反応 ブランドらしい動的特性とは呼びにくい UK編集部が試乗

リニアじゃないアクセルペダルの反応

マツダ6eを発進させるには、鍵を身に着けてシートへ座り、ドライブセレクターをDにするだけ。スタートボタンを押す必要はない。試乗車は、258psの駆動用モーターに68.8kWhのバッテリーという組み合わせだった。

アクセルペダルの反応は、不思議に思えるほどリニアではない。僅かに傾けると25%ほどのパワーを召喚できるが、深く踏み込んでも100%が開放されるまでに待ち時間がある。最大トルクは32.5kg-mで、加速力自体も鋭いわけではない。

マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)
マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)

回生ブレーキは、複数の強さから選択できる一方、アクセルオフから減速が始まるまでに僅かなラグがあった。惰性走行は可能だが、ワンペダルドライブには対応しない。

ブレーキペダルの反応は自然。回生ブレーキの効きを弱めて、ペダルを踏み変えることで、滑らかな速度制御はしやすくなる。走行中の静寂性は高いといえる。

マツダらしい動的特性とは呼びにくい

マツダの技術者がシャシーをチューニングしたはずだが、手を加えられる範囲には限度がある。乗り心地は、波長の長い揺れの吸収性に優れる一方、細かな凹凸に対する処理は反発的。CX-60に近い印象、ともいえなくはないけれど。

ステアリングホイールは、不自然に軽いモードか、重いモードから選択できる。どちらも、手応えはゴムを挟んだようで、キレがいまひとつ。フィードバックも殆どない。駐車するような速度では、かなり重くなるようでもある。

マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)
マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)

カーブではロールを伴うものの、安定性は低くない。後輪駆動らしい振る舞いを僅かに感じる一方、タイヤはミシュラン e-プライマシーを履いていても、少し気張るとスキール音が小さくなかった。全体的には、マツダらしい動的特性とは呼びにくいだろう。

運転支援システムは多彩。アダプティブ・クルーズコントロールは好調に機能していた反面、車線維持支援と制限速度警告、ドライバー監視機能の反応は少し過剰かもしれない。タッチモニターを都度触れれば、無効にできる。

巧妙なデザインでマツダ風 隠せない由来

電費は、モニター上の表示で平均6.4km/kWhとなっていたが、WLTP値は5.9km/kWh。駆動用バッテリーの実用量は66.0kWhで、現実的な航続距離は400km前後と考えられる。

試乗車は左ハンドルだったが、右ハンドル仕様の生産も控えている。英国での販売は、2026年前半に始まるという。価格は、まだ明らかになっていない。

マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)
マツダ6e タクミ・プラス(欧州仕様)

凡庸な中国製サルーンをベースに、巧妙なデザインでマツダ風に仕上げられた6e。見た目はハンサムで、内装のレザーは質感が良い。乗り心地も、概ね快適とは呼べる。それでも、別の出処にあることを隠せてはいない、と感じたのが本音だ。

◯:整ったスタイリング 部分的には魅力的なインテリア 全般的には快適な走り味
△:インフォテインメント・システムは今ひとつ 自然ではない操縦性

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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