20億円超え? 「霧」と名付けられた最後のW16搭載車 世界に1台、ブガッティから新ハイパーカー登場

公開 : 2025.08.11 06:45

ブガッティは、ワンオフの特注車『ブルイヤール』を公開しました。顧客のオーダーに基づいて製作されたもので、同社のW16エンジン搭載車としては最後のモデルとなります。価格は20億円を超える可能性もあります。

オーダーメイドの特注車

ブガッティは、20年にわたるW16エンジンの歴史に、ついに幕を閉じることになった。その最後のモデルとなる、同社史上最も高価なハイパーカーが公開された。

既存のミストラルをベースに、オープントップから固定式のガラスルーフに交換した『ブルイヤール』(Brouillard:フランス語で「霧」の意味)は、ブガッティ独自のW16エンジン搭載車としては最後とされている。

ブガッティ・ブルイヤール
ブガッティ・ブルイヤール    ブガッティ

今後のすべてのモデルは、コスワース設計のV16エンジンを中核とする合計出力1800psのプラグインハイブリッド・パワートレインを採用したトゥールビヨンをベースに開発される。

新型ブルイヤールは、ブガッティが新たに設立したコーチビルディング部門ソリテール(Solitaire)による初のワンオフ車として、2027年に発注者に納車される予定だ。デザイン責任者のフランク・ヘイル氏によると、同部門は「完全なカスタムメイドの、幾何学的にユニークなクルマ」を生み出し、従来のパーソナライズ部門シュール・ムジュール(Sur Mesure)をはるかに超えたものになるという。

ソリテールは、同じように特注車や限定車を開発しているベントレーのマリナー部門や、ロールス・ロイスのビスポーク部門に近いものといえるだろう。

従来のシュール・ムジュールの人気は非常に高く、「何らかの形でカスタマイズされていない新車はほとんどない」とヘイル氏は述べ、一部の富裕層な顧客からはさらに個性を追求する「大きな需要」があるとした。ブルイヤールは、そうした需要に応えるソリテール部門の姿勢を体現したものだ。

ヘイル氏は「ブルイヤールには、ミストラルと同じパネルは1つも使われていません」と述べ、注文に対する白紙からの設計アプローチにより、顧客の要望に「非常に具体的に応えることができる」と付け加えた。

奇抜なオーダーにも対応

ブルイヤールは、ミストラルと同じ最高出力1600psのクアッドターボW16エンジンと基本的なホワイトボディを引き継いでいるが、匿名の発注者の好みに合わせて大幅に変更された。同社創業者で熱心な馬術家だったエットーレ・ブガッティ氏の愛馬『ブルイヤール』からインスピレーションを得たという。

馬の筋肉質なフォルムは、ハイパーカーの滑らかに流れるようなシルエットに反映されており、ヘイル氏は「硬いラインはなく、柔らかい形状と膨らんだ筋肉で定義される」と説明している。ミストラル特有のバイザー型ガラスハウスと基本的なフロントライトデザインは維持しつつも、よりミニマリストな表面処理と流線型のリアエンドを採用し、新設計のベンチュリースタイルの固定式ダックテールウィングで結びとしている。視覚的にはベース車との明確な差別化が図られている。

ブガッティ・ブルイヤール
ブガッティ・ブルイヤール    ブガッティ

オープンルーフから固定ルーフに変更されたのも、独自性を追求するためだ。ヘイル氏は「これは1台限りのモデルなので、クーペにするのは非常に特別なことです。99台のミストラルはすべてロードスターでした。クーペもあってしかるべきでしょう」と語った。

2025年に誕生20周年を迎える、W16エンジンを初めて採用したヴェイロンへのオマージュも随所に散りばめられている。その例として、2基のルーフスクープや、顕著なキャブフォワード形状などが挙げられる。「このクルマの主な特徴は、前方に飛び出しながら後方に傾いているところです。ヴェイロンの斬新さを思い出させます」とヘイル氏は言う。

カラーリングも独特なもので、グリーンにグリーンを重ねたサテン塗装と、それに合わせた色合いのカーボンファイバーを採用している。

馬をモチーフにしたタータンチェック柄など、インテリアも色調が統一されている。

ソリテール部門は、このような大胆かつ奇抜なオーダーにも応えることができる。しかし、ヘイル氏は、顧客からどのような要求を受けた場合でも、最終的な製品はブガッティとして認識できるものでなければならない、と力を込める。「ブランドのDNAとなっている、馬蹄形のグリル、サイドのブガッティライン、垂直のセンターラインなど、当社のトレードマークである特徴を必ず残さなければなりません」

「カスタムメイドの1台限りのモデルであれば、通常の範囲から外れることも可能です。デザイナーにはある程度の自由が与えられますが、当社のDNA要素を再解釈することで、ブガッティらしく仕上げるのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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