【現役デザイナーの眼:アウディ・コンセプトC】アイデンティティを取り戻せ!初代TTとは本質が異なる?

公開 : 2025.09.09 11:45

欧州の伝統的ブランドには、未来を見せてほしい

さて、コンセプトCは初代TTの他に想起させるクルマがあります。それはアウトウニオン・タイプCを始めとした往年のレーシングカーや、それを模した2007年のコンセプトカー『アウディ・ローゼマイヤー』などです。

それが前述の細い縦長のグリルであり、ウインドウレスで塊感を強調させたリアのデザインに表れています。ですので、コンセプトCは過去の名車オマージュとも言えますね。

このビューが最も魅力的だと感じる。踏ん張ったスタンスはもちろん、シームレスなキャビン周りも見所のひとつ。
このビューが最も魅力的だと感じる。踏ん張ったスタンスはもちろん、シームレスなキャビン周りも見所のひとつ。    アウディ

このようなオマージュは現在のデザイントレンドのひとつで、特にEVで顕著です。ルノーではサンクやキャトルが復活しました。フィアットでは初代パンダがオマージュされグランデ・パンダになり、フォルクスワーゲンではIDバズが出ました。

さらにはスーパースポーツの世界でも、フェラーリ12チリンドリランボルギーニー・カウンタックLPI-800-4、アストン マーティン・ヴァラーなどがあります。この流れの理由は『過去のクルマに魅力があるから』と言うことがひとつでしょう。今見ても数十年前のクルマは魅力的ですよね。

もうひとつ理由があるとすれば、新興EVメーカー対策と言えます。

数多くのメーカーの台頭があり、しかもそのメーカーたちのデザインレベルが高いので、一見どのブランドか見分けが付かなくなった感じがします。ですので、おそらく新興メーカーにはないもの、すなわち歴史を存分に活用しようということでしょう。

しかし、それは本来あるべき新しい提案が少なくなった裏返しでもあるのかなと感じます。いちファンとしてはオマージュももちろん良いのですが、特に欧州の伝統的ブランドにはぜひ次の未来を見せて頂きたいものです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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