ホンダが新型プレリュードで描く未来予想図【日本版編集長コラム#53】

公開 : 2025.10.26 12:05

「うわあ~よく曲がる!」

そして『よく曲がる』と思ったのは、『アジャイルハンドリングアシスト』の作動領域拡大が大きいようだ。簡単に書けば旋回時に内側のブレーキを制御し、回頭性などを向上させるものだ。今回プレリュードではコーナー進入時にも制御領域を拡大している。

これで思い出したのは2代目NSXだった。あちらはフロント左右に1基ずつモーターを搭載し、これをトルクベクタリング機能でコントロールすることで旋回性能を向上させるもの。新車時の試乗で「うわあ~よく曲がる!」と今回と同じように感動したのをよく覚えている。

よく曲がると思ったのは、アジャイルハンドリングアシストの作動領域拡大が大きいようだ。
よく曲がると思ったのは、アジャイルハンドリングアシストの作動領域拡大が大きいようだ。    平井大介

この仕組みは後にフェラーリがSF90ストラダーレで追従しており、タイミング的に模倣ではないと思うが、少なくとも市販化したのはホンダが先だった。今回のプレリュードの走りのインパクトは、まさに2代目NSX級だ。

既にシビックやアコードで定評のある2L直4エンジン+2モーターのハイブリッドはこれまた感動的な加速フィーリングで、組み合わせる『S+シフト』は疑似的に8段で変速するが、これまた素晴らしい仕上がり。減速でもブリッピングするのが今回のポイントで、こういったシステムはひとつ間違えるとテレビゲーム的玩具感が出てしまうが、しっかりとリニアさを作り込んでいた。

さらにアクティブサウンドコントロールによる、スピーカーから聞こえるエンジン音も、絶妙な音量と音質。それでいてWLTCモードで23.6km/Lという低燃費だから、まさに新時代のハイブリッドスポーツカーが誕生したと言えよう。

だんだんとカッコよく見えてきた

……とまあ、第一印象とは全く正反対となる、自分でも驚きの大絶賛である。気になっていたスタイリングも、何度か取材しているうちにだんだんとカッコよく見えてきたから現金なものだ。

エンジニア氏によれば、気になっていたロードノイズはホイールベースが短くドライビングポジションがリアタイヤと近いからで、認識はしていたもののスポーツカーとしての性能を優先した結果との答えだった。荷室との間に遮るものがないのも無関係ではない。しかし、他に気になったのはせり出すタイプのドアノブが発進後に格納する音が大きすぎるくらいで、状況が許せば2400人のうちのひとりになっていたかもしれない。

日本国内でわずか月300台という計画は、控え目すぎていかにももったいない。
日本国内でわずか月300台という計画は、控え目すぎていかにももったいない。    平井大介

今回日本で発売開始されたプレリュードは、今年は北米、来年は欧州での発売も控えており、これらは全て埼玉県にある寄居工場で生産される。北米はトランプ関税の影響もありそうだが、これだけの仕上がりなら、グローバルでの評価も高いことが容易に想像できる。

しかし、依然として疑問が消えないのはボディ形式。ベースがシビックであること、そしてシビックが国内と欧州が5ドアハッチバック、北米が4ドアセダンであることを考えれば、2ドア(3ドア)クーペとするのは順当な流れだとは思う。それであれば、一番売れそうな北米でシビックと一緒に現地生産したいところだ。

また、これだけの完成度を実現したにも拘わらず、日本国内でわずか月300台という計画は、控え目すぎていかにももったいない。また、617万9800円というシビック・タイプRと同じ車両価格も、正直、安すぎると思う。

これが、ホンダが描く未来予想図の中で先行開発の意味合いを持っているのであれば合点はいく。この技術をさらに進化させ今後、売れ筋のボディ形式やカテゴリーに積めば、世の中の評価は変わってくるに違いない。電動化の未来も悪くないと。

つまりこれは、来たるべく電動スポーツカー新時代の『プレリュード=前奏曲』と捉えるべきなのだ。せっかくスポーツカーを名乗るなら、快適性をある程度無視した『タイプS』のようなグレードも見てみたいと、気の早い話ではあるが、夢は広がるのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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