ロータス・エヴァイヤはEVの究極形態? 想像を絶するトルク制御技術 英国記者の視点

公開 : 2025.11.06 17:45

あくまでも自然なハンドリングを目指す

エヴァイヤのようなクルマでは、超高性能の「シャシー・ブレイン」がこれを処理してくれる。常に車輪の回転速度を監視し、操舵角、対地速度、ヨーレート、スロットル開度、ブレーキ圧力などをチェックして、プログラムに基づいて各モーターのトルクを調整する。

すべてはコンピューターの処理能力によるものだ。機械的な補助はない。一般的なスタビリティ・コントロール・システムを搭載した従来車と比較すれば、通常砲弾と誘導ミサイルほどの差がある。

ロータス・エヴァイヤ
ロータス・エヴァイヤ

また、これは決してオフにしたくなるような厄介なシステムでもない。エヴァイヤの目的は単にナチュラルなハンドリングに仕上げることだけだ。少なくともサーキットでは、グリップ限界まで攻めてもシステムが強く介入してくるような感覚はなかった。

車輪の回転速度の「制御」が繊細かつ漸進的で、クルマの動きやラインの保ち方だけでなく、ドライバーの意図、さらには気分さえも汲み取ってくれる。

そんなことは不可能だと思われるだろう。だからこそ、ポルシェポールスターBMWヒョンデキアといった多くのブランドが、4モーターの完全なシステムに挑戦するより、少ないモーターとベクタリング・ディファレンシャルを組み合わせた「ホット」なEVを好むのかもしれないと、今になって思う。

本当に優れた完全独立トルクベクタリングは、単に難しすぎるのだろうか? それとも、最適な制御方法を判断する余地が広すぎて、かえって手がかりを失っているだけなのだろうか? いずれにせよ、その秘めたる可能性の大きさは計り知れない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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