面白さが増すトラック・モード アルピーヌA390 GTS(2) 新たな濃いめの味付けも必要?

公開 : 2025.11.24 18:10

家族全員でドライブを楽しめるアルピーヌ、A390 モーターは計3基 プレミアムな内装 充分すぎるほど速い469psのGTS 明らかに面白さが増すトラック・モード UK編集部が試乗

充分すぎるほど速いGTS 滑らかなパワー感

アルピーヌの第3段となる、電動クロスオーバーのA390。システム総合469psを誇るGTSは、0-100km/h加速を3.9秒でこなす。ヒョンデ・アイオニック 5Nより多少パワーは劣るものの、充分すぎるほど速い。

それでいて反応は過剰でもなく、アクセルペダルの操作に対して滑らかにパワーが発生し、扱いやすい。A110に影響を受けたという、合成サウンドが再生されるが、地下鉄の中のような響きに筆者は聞こえた。お好みでなければ、オフにできる。

アルピーヌA390 GTS(欧州仕様)
アルピーヌA390 GTS(欧州仕様)

手元には、回生ブレーキを調整するダイヤル。ブレーキペダルの感触は、踏み始めで若干柔らかいものの、倒していくと頼もしい制動力が立ち上がる。摩擦ブレーキは、バイワイヤで制御される。

ドライブモードは、ノーマル、スポーツ、トラック(サーキット)、インディビジュアルの4種類。サスペンションの硬さや、前後のパワーバランスは選べない。下手に変えるより、バランスを煮詰めた初期状態が望ましいと、同社の技術者は主張する。

明らかに面白さが増すトラック・モード

A390の操縦性が、A110を想起させるかといえば、即答は難しい。濡れたサーキットでのノーマル・モードの印象は、普通の電動クロスオーバーといったところ。グリップ力は高く、限界を迎えると穏やかなアンダーステア。電子制御が適度になだめてくる。

スポーツ・モードは電子制御の介入が緩くなり、ステアリングが僅かに重くなる程度だが、トラック・モードでは明らかに面白さが増す。後輪駆動の感覚が強くなり、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sは、確かな足取りでフロントノーズの向きを変えていく。

アルピーヌA390 GTS(欧州仕様)
アルピーヌA390 GTS(欧州仕様)

ブレーキを残しながらアクセルペダルを傾けると、リアを挑発できる。それでも、モードを問わず四輪駆動システムが動きを予測し、過度なテールスライドは沈められるため、完全に自然な挙動とはいえないだろう。

一般道では能力を引き出しきれない

デンマークの一般道の限り、ハッチバックのA290より限界領域が遥かに上で、能力を引き出しきれない印象。開放的なワインディングなら、顕にできる可能性はある。

ステアリングの感触はルノーに近く、切り始めの反応はやや過敏。現実的な速度域では、トラック・モードでも、前後モーターのバランスはニュートラルといえる。トルクベクタリングの威力も発揮されにくく、気持ちが刺激されるほどではない。

アルピーヌA390 GTS(欧州仕様)
アルピーヌA390 GTS(欧州仕様)

大きなアルミホイールと通常のダンパーの組み合わせながら、乗り心地は良好。硬めだが、スポーツ・クロスオーバーとしては快適と呼べる。

電費は、カタログ値でA390 GTが5.3km/kWhで、GTSが4.8km/kWh。航続距離は、それぞれ555kmと503kmが主張される。価格は、英国では約5万9000ポンド(約1204万円)からが見込まれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アルピーヌA390 GTSの前後関係

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