トヨタがアメリカから逆輸入?気になる『アメ車』のこれから【富士スピードウェイでNASCARが全開走行】

公開 : 2025.11.18 11:45

富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久最終戦で、NASCAR最新マシンが全開走行を行いました。一連の日米通商交渉の中で、国レベルの友好を強く打ち出した関連プロジェクトは初と思われます。桃田健史のレポートです。

富士スピードウェイに『アメリカパーク』が出現

スーパー耐久シリーズ2025最終戦(11月15〜16日)の開催と、一連の日米通商交渉がシンクロした。

これまで富士スピードウェイを含めて全国各地でアメリカ車関連のイベントが開催されてきたが、国レベルの友好を強く打ち出した関連プロジェクトは今回が初めてではないだろうか。

富士スピードウェイに『アメリカパーク』が出現。右からトヨタ・タンドラ、同ハイランダー。
富士スピードウェイに『アメリカパーク』が出現。右からトヨタ・タンドラ、同ハイランダー。    桃田健史

しかも、日本で売れ筋のアメ車であるジープラングラーや、テスラのファンミーティングもしくは新車試乗会ではなく、『トヨタのアメ車(アメリカ生産・アメリカ販売車)』である『カムリ』、ミッドサイズSUVの『ハイランダー』、そしてフルサイズピックアップトラックの『タンドラ』がズラリと並ぶ、『アメリカパーク』が出現したのには驚いた。

また、アメリカ最大級モータースポーツであるNASCAR最新マシンと、現役NASCARカップシリーズドライバーらも登場し、日本人ドライバーを含めて6台が全開走行。マシンはカップシリーズ実戦に参加しているトヨタ、GMシボレーフォードの3タイプだ。

走行にあたり、コース上ではトヨタ自動車の豊田章男会長とジョージ・グラス駐日大使が日米親善を印象づけ、NASCARチームの多くが本拠地を置くノースキャロライナ州出身の歌手、安田れいさんがアメリカ国歌を斉唱してNASCAR上陸を盛り上げた。

さらに、スーパー耐久シリーズ最終戦には特別クラスとして『ST-USA』を設定。『フォード・マスタング』とGMの『シボレー・コルベット』が日本初参戦を果たした。

型式指定に関する規制緩和でアメ車が増える?

今回のアメ車絡みイベントの背景には、トランプ関税の影響がありそうだ。

今春の27.5%という提示に対して最終的に15%で妥結するも、日本はアメリカに対して5500億ドル(1ドル154円換算で84兆7000億円)もの投資を約束。こうした枠組みとは別に、トヨタはアメリカで100億ドル(1兆5400億円)の追加投資を決めている。

6台のNASCARが全開走行。マシンは実戦に参加しているトヨタ、GMシボレー、フォードの3タイプ。
6台のNASCARが全開走行。マシンは実戦に参加しているトヨタ、GMシボレー、フォードの3タイプ。    トヨタ自動車

さらに、アメリカが常々主張してきた『日本にはアメ車が極めて少ない』という指摘に対して、トヨタはアメリカ生産車の日本への輸入を検討中だが詳細は未定。トヨタの動きとも連動して、国土交通省ではアメリカからの新車輸入に対する規制緩和に動き出している。

具体的には『国連の車両等の型式認定相互承認許定(いわゆる1958年協定)』に対してだ。現在61ヵ国と1地域が加入しているが、アメリカは未加入。一方、車両や車両関連装置の世界技術規則に関する1998年協定には日本とアメリカが加入している。

そのため、日本にアメ車の新車を輸入するにはEU(欧州)での型式認証を受けて日本に輸入する方法を取っている。また、輸入数が少量の場合は、『輸入自動車特別取扱制度(PHP)』を活用する。

こうした型式認定のあり方が今後、何らかの形で緩和されることになりそうだ。それでも日米の市場環境は大きく違うため、アメ車が一気に増えるとは言えないが、アメ車ファンにとっては良い流れである。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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