【第14回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~タイヤはゴムでできている、のだけれど~

公開 : 2025.11.19 12:05

製品化は早くても2030年以降だけれど

一方、横浜ゴムは、同社と日本ゼオンが共同で行う、サトウキビを取った後の残材やトウモロコシの皮、枯葉、木片、竹皮、甜葉、イネなどを使った研究について発表。

ルートはふたつあり、ひとつは代謝工学とか剛性生物学といった最先端のバイオテクノロジーを使ったもので、植物由来の唐を主な原料として使います。

2015年コンチネンタルのコンチスポーツコンタクト6のドイツ試乗会のときのプレゼン写真。
2015年コンチネンタルのコンチスポーツコンタクト6のドイツ試乗会のときのプレゼン写真。    斎藤聡

遺伝子組み換えを使って微生物(大腸菌や酵母など)の代謝経路を人工的に改変し、細胞内の酵素の働きによってブタジエンやイソプレンなどのモノマーを生成します。これをガスとして回収・精製します。

もうひとつのルートは、糖化→発酵→蒸留によりエタノールを製造し、このバイオエタノールを、高性能触媒を使って直接変換させる方法です。

2分子のエタノールを反応させブタジエンと水と水素を精製する方法で、
2CH3CH2OH→触媒→CH2=CH-CH2+H2O+H2
になります。

技術的には、後者のバイオエタノールからブタジエンを作る方法が(比較的)容易で、主力となっているようです。

ブリヂストンの精密熱分解によるケミカルリサイクルも、横浜ゴムのバイオマス由来のタイヤ製造も、まずはブタジエンの製造が柱になっているようです。

SBRの生成にはリサイクル原料としてスチレンとブタジエンの回収、精製が必要になるため、現段階では工程がシンプルで、高効率なブタジエンの製造に力を入れているということなのでしょう。

また、横浜ゴムのバイオマスからのブタジエン製造を見ても、エタノールからの触媒技術は、微生物発酵法よりも既存の石油化学プロセスに近いため、量産化技術の確立が速いことが理由と考えられます。

ちなみにブリヂストンでは2025年までに岐阜関工場敷地内に実証プラントの建設を決定しており、2030年までに量産を想定した大規模実証試験を目指しているとのことです。

また、横浜ゴムでも、2030年までの技術を確立し2034年の事業化を目指すとしています。

実際の製品に反映されるまでにはさらに時間がかかると思いますが、タイヤのCO2削減の研究はこんなふうに進められているというのを知ることができたJMSでした。

ちなみにトレッド剥離したジョギングシューズですが、材料はタイヤと同じくSBRとBR、IR(イソプレン)が配合されているんですね。で、次のジョギングシューズを探していたら、アウターソールに『コンチネンタルラバー』なんて名前のゴムが使われているものが。タイヤのコンチネンタル社との共同開発で作られたアウターソールみたいです。

そういえばだいぶ前ですけど、コンチネンタルの試乗会に行ったときに、アディダスと共同開発でスポーツシューズのアウターソールをやっている、なんて説明をしていたような……。次はそれを探してみようか。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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