フォードGT40に抜かれた過去 ル・マン仕様のミニ・マーコス(2) 9年費やしレストア オーナーが抱く不思議な気持ち

公開 : 2026.04.12 17:50

300km/h以上で追い越したフォードGT40

ギア比が長く、クラッチを滑らせながら発進。20km/h手前まで半クラッチ状態を続けないと、1速でもエンストしそう。レーシングシューズを履かないと、間隔が狭く正しいペダルを踏めない。筆者は靴を脱ぎ、靴下だけで重いクラッチペダルを押し込む。

50km/h以下では、正直運転しにくい。1966年のル・マンでは、300km/h以上のスピードで、フォードGT40 MkIIが追い越したはず。車内は賑やかで、すべてが重く、暑い。24時間も2人が過ごしたとは想像し難いほどの、苦行といっていい。

ミニ・マーコス・ル・マン仕様(1966年)
ミニ・マーコス・ル・マン仕様(1966年)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

排気量が増やされたAシリーズ・ユニットは、驚くほどトルクが太く、ある程度スピードが乗ると充分速い。這うように車高が低く、極めて機敏に旋回できる。

ライフワークが仕上がる不思議な気持ち

前後で色が違うアルミホイールも、当時のまま。「テスト走行では前後ともホワイトのホイールだったんですが、ル・マンではリアがブラックだったんです。サイズは同じなのに」。ブーイが説明する。ミニ・マーコスに乗る知人から、譲ってもらったという。

「長年作業を続けて来たクルマが、完成するというのは不思議な気持ちですね。自分にとって、半ばライフワークでしたから。自伝の一部のようですよ」

ミニ・マーコスと、レストアを手掛けたオーナー、ジェローン・ブーイ氏
ミニ・マーコスと、レストアを手掛けたオーナー、ジェローン・ブーイ氏    トニー・ベイカー(Tony Baker)

そう話すブーイは、しばらくこのミニ・マーコスを大切にするつもり。ル・マンのイベントで、デモ走行したいと考えている。しかし、遠からず売却するだろうと続ける。

「半分は実務の延長でしたが、探偵気分で情熱を費やしました。自分にとって、このクルマの9割は物語を綴るようなもの。これまでの時間が、何より楽しかったんです」

協力:ショブドン飛行場

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ル・マン仕様のミニ・マーコスの前後関係

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