レクサスやフォードとも乗り比べ ルノーのトップが自ら試乗する、極秘の新型車(後編) 新CEOの素顔とは

公開 : 2026.06.12 17:25

曖昧な合意形成は許さない

さて、昼食の時間だ。コース横のミーティングルームで出される、フランス流のサンドイッチをいただく。上質なフィンガーフードが振る舞われ、会話を楽しみつつ消化にも配慮した十分な時間が設けられている。プロヴォスト氏は、現在の過渡期における自動車業界の、あまり注目されない諸問題について語る(「今の時代、ブルーカラーの人材を見つけるのは難しい」とのこと)。

続いて彼は、CEOとしての意思決定の難しさについて語った。

ルノー・トゥインゴ
ルノートゥインゴ

「決断すること自体に難しさはありません。とはいえ、最初の考えとは異なる決断を下すこともあります。わたしは合意形成を重視しますが、曖昧な合意は決して許しません。社員には『自分のクルマの方が優れている。その理由は明確だ』と言ってもらいたいのです」

再び移動する。まずは最近発売されたルノー『トゥインゴ』を視察し、続いて『スプリング』の後継となるダチアの新型車をプレビューした。トゥインゴの洗練された魅力を損なうことなく、見栄えが良く、完全にダチアらしい仕上がりになっていることに感心した。現時点では詳細を明かせないが、ダチアらしいギミックが盛り込まれている点も印象的だった。

温厚で親しみやすい大企業のCEO

次に、韓国で販売されている大型クロスオーバーのルノー『フィランテ』と、堂々とした佇まいのヒョンデ・サンタフェで比較試乗を行う。フィランテの後部座席が驚くほど広々としていること、サンタフェのインテリアにはあまり感銘を受けなかったこと以外、特に目新しい発見はなかった。

最後に、2台のMG車を取り上げる。MG ZSハイブリッドはあらゆる面で優秀だが、ダチア・ビッグスターほどの魅力には程遠いという点で意見が一致する。一方、MG HSプラグインハイブリッドについては、プロヴォスト氏は「大きな脅威」と評した。

ルノー・フィランテ
ルノー・フィランテ    ルノー

実用的で手頃な価格であるだけでなく、ルノーが常に得意としてきたような、エモーショナルな魅力を備えているからだ。ルノー・グループの主要エンジニアの1人であるヴィットリオ・ダリエンツォ氏は、『シンビオズ』と『オーストラル』との比較調査を任されている。

気がつけば午後3時だ。プロヴォスト氏は明るく親しみやすい挨拶で別れを告げた。彼はパリのオフィスへ直行し、仕事を続ける。彼は賢明で、一緒にいて楽しい相手だった。そんな多国籍企業のCEOが、いったい何人いるだろうか?

彼が電話で威圧的に怒鳴ったり、社内の火消しに奔走したりする場面は一度もなかった。学び、指導し、決断するためにここに来ており、筆者は力強い印象を受けた。彼はまさにこの仕事にふさわしい人物のようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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