純正タイヤを選ぶ理由 ピレリのパブリックイメージ(後編)【サイトウサトシのタイヤノハナシ 第21回】

公開 : 2026.06.17 12:05

第4世代P-ZERO試乗会での驚き

ピレリにおいて、ボクの中でキーとなっているタイヤがいくつかあります。初代P7、 初代P-ZERO、P7000がこれに当たります。

さらに下ると、第4世代のP-ZEROがあります。このタイヤの試乗は、ポルトガルのエストリルで行われました。ピレリは、第4世代(PZ4)で『クルマメーカーごとのパーフェクトフィット』を掲げます。つまり、クルマごとにオーダースーツのようにOEタイヤを作るという方針を打ち出し、それを実践したのです。

剛性感があり、どっしりして安定感が高かったポルシェ・ターボ。
剛性感があり、どっしりして安定感が高かったポルシェ・ターボ。    斎藤聡

試乗会では、ポルシェ911ターボとランボルギーニウラカンアウディR8(5.2L)、この3台にイッキに試乗することができました。

ポルシェだけはフロントタイヤのサイズが1サイズ違ったのですが、ウラカンとR8は前後同じ。つまり、同じサイズのタイヤを履いたクルマの乗り比べができたんです。

乗ってビックリ。乗り味は文字どおり3車3様でした。

911ターボは、剛性感があり、どっしりしていて、ものすごくトラクションがかかり、安定感が高い。

ウラカンは、ソリッドと言いたくなるくらい操縦性がシャープで、切れ味抜群。前を走るクルマの一瞬の隙をついてスパッとインを刺す、そんな鋭さがありました。

そしてR8は、素晴らしくコントローラブル。クルマが真横を向いてしまってもスピンせずコントロールできる、と確信できるくらい自由自在の操縦性を持っていました。

これが全部同じP-ZEROなんです。

同じタイヤを作り分ける力

ピレリではビードワイヤーの太さ、ビードフィラーの厚み、高さ、片さ、それにトレッドコンパウンドをそれぞれ数種類持っていて、しかもベルト角度もクルマに合わせてチューニングを施し、そのクルマにベストフィットするタイヤに仕上げて見せたのです。

同じタイヤでここまでキャラクターを作り分けることができえるのかと驚かされました。

操縦性がシャープで、切れ味抜群のランボルギーニ・ウラカン。
操縦性がシャープで、切れ味抜群のランボルギーニ・ウラカン。    斎藤聡

言い換えると、第4世代のP-ZEROを標準装着しているハイパフォーマンスカーは、安易にP-ZEROだからといって装着するのはNG、純正タイヤを選ぶのが良いと思います。

それと同時に、ピレリはそれまでインチアップに力を入れていたこともあり、リプレースタイヤに力点を置いていたのですが、このP-ZEROを期に純正(OE)タイヤに力を入れるようになったのです。

スタッドレスタイヤは和洋折衷

スタッドレススタイヤについても少し触れておきましょう。

ピレリ最初のスタッドレスタイヤは、アイスストームになります。このタイヤは1960年代、製造ノウハウの提携関係にあったトーヨータイヤへの委託製造に始まっています。

ニュージーランドでの雪上試乗会。
ニュージーランドでの雪上試乗会。    斎藤聡

その後、中国の自社工場に製造拠点を移しますが、ピレリでは日本の冬の氷雪上性能を重視しており、日本のユーザーの評価が、現在のスタッドレスタイヤ制作にも大きく反映されているのだそうです。

もともとピレリは、アルプスや北欧など厳冬地域向けのウインタータイヤのノウハウを豊富に持っているので、ピレリのスタッドレスタイヤは、和と洋のテイストがうまくミックスしているという印象があります。

ピレリから目が離せない訳

前回の最後に話題に上がった、サイバータイヤについても少し触れておきましょう。

2026年5月にピレリとパガーニボッシュの3社が、サイバータイヤを標準装備したパガーニ・ユートピア・ロードスターで、ヨーロッパ横断1500kmの旅を行い、無事終了しています。

このテストは、サイバータイヤと車両電子制御の連携実証や、ABS、ESPトラクションコントロールなどの制御の確認など、実際の公道でのデータ収集が行われたのだそうです。

ちなみに、サイバータイヤはセンサーを持ったタイヤで、走行中のクルマ側制御システムとの通信と連携制御が可能。今後、AIなども含め、幅広い制御への発展性を持ったタイヤです。

ピレリ(イタリア政府)が、半ば強引に経営のイニシアチブを本社に取り戻したのは、このタイヤの存在が大きかったわけです。これからの自動車制御システムに欠かせないピースとなることは間違いありません。ピレリは、今後の展開から目が離せないタイヤメーカーのひとつです。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オーバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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