ガソリン価格に振り回されない! 補助金なしでも買いたい400万円切りのEV『シトロエンe-C3』は、昔ながらの自動車っぽい【森口将之が解析】

公開 : 2026.06.17 11:45

車内に収まった印象は、すっきりしている

車内に収まった印象は、2026年に新車で買えるコンパクトカーとしては、すっきりしているなあということ。

メーターはインパネ奥のスリットの中に収まっていて目立たないし、スイッチの数も少なめ、トリムの樹脂も上質に見せるような技が込められているような感じは受けない。

いい意味で、上質に見せる技が込められているように感じない室内。
いい意味で、上質に見せる技が込められているように感じない室内。    平井大介

でもインパネにはファブリック調の素材が貼られ、ドアのアームレストにはメッセージの入ったオレンジのタグが付けられるなど、シートの座り心地を含めて、豊かさや遊び心を届けようという意志はしっかり伝わってくる。

欠点を潰すことが先決の日本的なものづくりでは、なかなか生まれてこないタイプの空間だ。心地よい椅子がひとつあるだけで、冷たく感じた部屋がぐっと暖かく感じることを、フランス人は理解しているのだろう。

EVとしては軽い1470kgのボディ

フロントに積まれ前輪を駆動するモーターの最高出力は113ps、最大トルクは115Nm。ハイブリッドの101ps/205Nmと比べると、最大トルクの数字が心許ないと感じたが、実際は低回転から十分な力を発揮してくれるためか、EVとしては軽い1470kgのボディを不満なく加速させていく。

乗り心地は、ハイブリッドとボディを共用するEVの多くがそうであるように、重厚になった。段差や継ぎ目の伝え方はまろやかになり、シトロエンならではのプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)の揺れは落ち着きが加わった。

シートはシトロエンではおなじみのアドバンストコンフォートシート。
シートはシトロエンではおなじみのアドバンストコンフォートシート。    平井大介

でもドライブしていてもっとも印象的だったのは、こういった試乗記っぽい内容ではなく、昔ながらの自動車っぽいと感じたことだ。

快適なコンパクトカーという本来の性能が響く

多くのEVは、エンジン車よりも先進的なイメージを持たせようと、装備も先進的になりがちだ。そちら方向を競っている感さえある。ところがe-C3には、そういうところがない。例えばクルーズコントロールもアダプティブじゃない。

でも車内はシンプルながらドライではないし、乗り心地は水準以上だし、シトロエンらしく直進安定性は問題なし。先進装備が控えめである分、快適なコンパクトカーというクルマ本来の性能が響いてくるのだ。

フロントに積まれ前輪を駆動するモーターの最高出力は113ps、最大トルクは115Nm。
フロントに積まれ前輪を駆動するモーターの最高出力は113ps、最大トルクは115Nm。    平井大介

復活が噂されている『シトロエン2CV』がそうであるように、『これで充分』という気持ちにさせてくれるし、シンプルな成り立ちだからこそ、乗り心地や直進性がありがたいと感じる。

それはハイブリッド車でも基本的に同じだが、EVだからこそ、普遍的な美点が強調される。

オフィシャルサイトには早速、「もうガソリン価格に振り回されない」というフレーズが並んでいる。確かにこのご時世、EVが気になるという人はいるはず。でもそんなに先進的でなくてもいいという人には、補助金なしでも399万円からという価格とともに、響く1台になるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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