『左ハンドル+マニュアルのイタリア車』しか買ったことのない話(後編)【日本版編集長コラム#96】

公開 : 2026.08.23 12:05

イタリア車にマニュアルは不可欠

こうして言語化していくと、イタリア車を操る喜びは、やはりマニュアルが不可欠となっていることがわかる。もちろん、セミATを含めたオートマチックを搭載していても、素晴らしいイタリア車はたくさんある。

すぐに思い浮かぶのは、清水草一センセイがその変速の速さを『テレパシー』と例えたセミATを搭載するフェラーリ430スクーデリアや、中期モデルで初めてトルコンATを採用した先代マセラティクアトロポルテといったあたりだが、現代で言えばアルファ・ロメオジュリア、マセラティ・グランカブリオ、ランボルギーニテメラリオなど、感動的なイタリア車は多い。

昨年の夏、長年使用し劣化してしまったラッパーズのボディカバーを新調した。
昨年の夏、長年使用し劣化してしまったラッパーズのボディカバーを新調した。    平井大介

だから決してマニュアル至上主義ではなく、その精神的な原点として、崇め奉りたいという話である。

そして、これを本来の魅力や雰囲気で味わえるのが左ハンドル。座った瞬間にまるでイタリアを訪れたかのような気分になるというか、なぜか本能的にしっくりくるのだ。そして右手を動かしながらクルマを操り、エンジンのビートと心の鼓動がシンクロしていく……。

それは所有した4台に限らず、かつて試乗したランチア・アウレリアやフェラーリ250のようなクラシックの名車から、マニュアルを搭載する近年のモデルまで、等しく持っている魅力だった。

マニュアルに回帰の動き

ちなみに右ハンドルのマニュアルだと一番使用する1速が左奥で遠く、マツダロードスターくらいショートストロークのもの以外は、個人的には好みではない(面倒)というズボラな理由もあったりする。右手が利き手であることも、無関係ではないだろう。

もちろん、有料駐車場など不便な場面もあるにはあるが……(昔、ETCがない時代はもっと不便だった)。

今年の正月に近所で撮影。このまま大事に一生持っていてもいいと思っている。
今年の正月に近所で撮影。このまま大事に一生持っていてもいいと思っている。    平井大介

もはや左ハンドル+マニュアルのイタリア車を新車で購入するのは至難の業だと思っていたが、最近、現行フィアット500やイプシロンにもマニュアルモデルが登場。ハイエンドの世界では、フェラーリに『12チリンドリ・マヌアーレ』、英国車ではあるがマクラーレンに『McL 6GT』が登場し、マニュアル回帰の動きも出始めている。

イプシロンに関しては20年も所有できたので、このまま大事に一生持っていてもいいと思っている。しかしまた、ひと目惚れするような運命の出会いがあれば、その隣にもう1台並ぶことが……あるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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