ロードテスト フォルクスワーゲンTロック ★★★★★★★★★☆

公開 : 2019.03.16 11:45  更新 : 2019.03.27 18:14

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★☆

たとえゴルフでなくポロのそれではあっても、表立ってGTIの名を持つホットハッチのエンジンを軽くデチューンし借用したクロスオーバーはレアだ。とはいえ、そうした類のクルマは、フォルクスワーゲンがとっくに造っていてもおかしくなかったともいえる。彼らは、競合する大衆車メーカーの大多数に比べて幅広いエンジンラインナップを展開する傾向があり、セミプレミアムとでも呼ぶべき立ち位置ゆえに、これもライバルたちがなし得ないやり方で、もっとパワフルな内燃機関を設定することも可能なのだ。

Tロックの2.0TSIはこのクラスではこれまでなかったほど力強く痛快で、ひときわ異彩を放つもの。しかもスムースで磨き抜かれてもおり、低速でも高速でも、巡航時には実に静かでマナーがいい。スマートで変速の早いDCTとは、自動でもシフトパドルでの手動でも優れたマッチングをみせる。つまりはこの4WDパワートレイン、おそらくその完璧さゆえにクラスベストを名乗れるだろう。

しかし、なんといってもこのクルマは速い。今回のテストで見せた速さは、フォルクスワーゲンが主張する以上だった。ローンチコントロールの存在を期待することはないだろうが、トランスミッションのSモードとESCスポーツモードを選択し、ブレーキを踏み込んだままパワーを上げていくと、その効果が得られる。そうしてスタートすると、Tロックは滑りやすいコンディションでも十分すぎるトラクションを発揮し、0-97km/hを6.7秒で駆け抜ける。0-100km/h=7.2秒という公称値が、必要以上に控えめな数字だと思えてくる。

EA888ことこの2.0ℓエンジンは、5500rpm以上では正当なパフォーマンスブランドのエンジンほど自由には回らない。GTIのようなオーラを放つことはない。それでも、回転計の中程を針が指している間は、十分に力強くクルマを引っ張る。サウンドは、品がいいものの活気もある。比較的波がなく、弾けるようなところもないパワーフィールは、エンジンスピードとはほぼ関係ないが、これはゴルフのホットモデルをはじめ、フォルクスワーゲン・グループのパフォーマンスモデルではお馴染みだ。

テストコース

寒く湿ったコンディションであってさえ、Tロックはミルブルックのアルパインと銘打たれたヒルコースで、かなり活発な前進をやすやすとやってのける。背が高く、スプリングの硬いクロスオーバーなら、コーナリンググリップにさらされるように感じ、飛ばすと我慢できないこともあるものだが、フォルクスワーゲンはターンインでも大きな横荷重がかかった際にも、豊かなグリップをジワジワと発揮させることで、運動性の格の違いを示す。タイトなコーナーでは予想を裏切り、速度を保ちつつアペックスを捉える。

スタビリティコントロール(ESC)は、ほとんど作動を感じさせずに、コーナー脱出時のパワーオンでグリップ限界を超えるのを防いでくれる。ただしこの手のシステムは、デキのいいものでも大抵そうだが、パワーを制御するというよりは絞ってしまうように感じられる。

ESCを切ると、次第に見えてくるのが、4WDシステムの限界だ。パワーオンでのアンダーステアを止められるほどには、精巧なメカニズムではない。

スポーツモードで速度が乗るコーナーを駆け抜ける際のボディコントロールは最高で、乗り心地のビクつきもほんのわずか。ノーマルモードでは、ホイールコントロールがより滑らかだが、それでも抑えは利いている。

T2のようなコーナーを、Tロックのシャシーは予想した以上の速さで走り、進入速度を上げようという気にさせられる。

発進加速


テストトラック条件:湿潤路面/気温2℃
0-402m発進加速:15.4秒(到達速度:146.6km/h)
0-1000m発進加速:28.8秒(到達速度:177.5km/h)


日産ジュークNISMO RS(2015年)
テストトラック条件:湿潤路面/気温6℃
0-402m発進加速:15.9秒(到達速度:149.7km/h)
0-1000m発進加速:28.5秒(到達速度:186.2km/h)

制動距離


テスト条件:湿潤路面/気温2℃
97-0km/h制動時間:3.17秒


日産ジュークNISMO RS(2015年)
テストトラック条件:湿潤路面/気温6℃

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