古典的スポーツカー比較試乗 ケーターハム・セブン vs マツダMX-5 vs トヨタGT86 vs 日産370Z vs フォード・マスタング 前編

公開 : 2019.10.12 18:50  更新 : 2021.01.28 18:11

まずはケーターハム

さらに重要なことは、この5台を一堂に集めることで、ますます洗練されていく自動車世界のなかで、こうしたモデルが依然として時代に即したモデルであり続けていけるのか、それとも単に時代錯誤の遺物が残されたわずかな余生を過ごしているだけなのかを知ることになるということだ。

もし、こうしたモデルがすでに時代遅れの存在なのだとしたら、ケーターハムはかなりの長期間に渡ってその死を待ち続けているということになるのであり、実際その期間は実に70年以上もの長きにわたっている。

ケーターハムで感じるスリルはリアルで切迫したものだ。
ケーターハムで感じるスリルはリアルで切迫したものだ。

1948年にロータスとして誕生したセブンは、間違いなくフロントエンジン・リア駆動というレイアウトの魅力を体現する最高の1台であり、スーパーチャージャーエンジンを積んだトップモデルの620を除けば、すべてのセブンが自然吸気エンジンにマニュアルギアボックスとリア駆動を組み合わせている。

実際、基本的にこのクルマは最小限のボディワークに覆われたエンジンとトランスミッション、そしてサスペンションから構成されており、その結果、いまステアリングを握っている310Rの車重はわずか540kgに留まっている。

メカニカルレイアウトの魅力

さらに、そのほとんどが154psを発揮するフォード製1.6Lエンジンとマツダ由来の5速マニュアルギアボックス(ケーターハム製6速ギアボックスは、サプライヤーの廃業に伴いディスコンとなっている)、短いプロペラシャフトとリミテッドスリップディフェレンシャルを備えたド・ディオン式リアアクスルのものだ。

つねにセブンに乗り込むにはある種の曲芸が求められ、今回のショッキングオレンジのボディカラーに塗られたナローボディの場合にはなおさらだが、それでも一度シートに体を潜り込ませることに成功すれば、決してそのキャビンから出たいとは思わないだろう(セブンから降りるのはさらなるチャレンジでもある)。

どこをとってもセブンのキャビンはミニマリストの精神を感じさせる。
どこをとってもセブンのキャビンはミニマリストの精神を感じさせる。

もし、フロントエンジン・リア駆動というメカニカルレイアウトの魅力を最高に引き出すことに成功した自動車メーカーがあるとすれば、それはケーターハムということになる。

今回集まった他の4台同様、セブンのエンジンはドライバーの右足と直接繋がっているかのようであり、右足の角度に応じたレスポンスを返す。加速の遅れや予期せぬトルクの噴出などといったことはなく、ドライバーの求めに対する正確でリニアな反応だ。

パワーは十分 セブンに近い存在

それはこのクルマの4気筒エンジンをより軽々と回すためRスペックに与えられた軽量フライホイールのお陰でもあり、素晴らしいエンジンサウンドと驚異的な加速を味わわせてくれる。さらに、このエンジンに組み合わされるのが、思わず用も無いのにシフトアップしてはヒール&トウでのシフトダウンを楽しみたくなるような、素早いギアチェンジが可能な見事な5速マニュアルギアボックスだ。

より重要な点は、セブンの1.6Lエンジンには、このクルマの見事なバランスを誇るハンドリングを十分楽しむことができるだけのパワーが備わっているということだ。手首の動きに反応するステアリングとフロントエンジン・リア駆動のメカニカルレイアウト、さらには非常に小さな慣性マスが、ドライバーが右足首の角度をほんの少し調整するだけで、このクルマを意のままに操ることを可能にしている。

マツダMX-5は1989年の誕生以来、この古典的なレイアウトを信奉し続けているが、依然として新鮮さを失っていない。マツダのエンジニアたちは、そのシンプルさと1000kgを切る車重によって、究極のMX-5とは1.5Lエンジンを積んだモデルだと考えている。エントリーレベルのスポーツカーとしては間違いのない選択だ。
マツダMX-5は1989年の誕生以来、この古典的なレイアウトを信奉し続けているが、依然として新鮮さを失っていない。マツダのエンジニアたちは、そのシンプルさと1000kgを切る車重によって、究極のMX-5とは1.5Lエンジンを積んだモデルだと考えている。エントリーレベルのスポーツカーとしては間違いのない選択だ。

非常にシンプルな純粋さと、混じり気のないドライビングの喜びであり、セブンほど基本に立ち戻ることで、クルマとドライビングを愛する意味を思い起こさせてくれる存在などない。

やや異なる方向性を持ち、さらに洗練されてはいるものの、この点においてはMX-5とGT86は思ったよりもセブンに近い存在だ。両者とも1tほどの車重に2.0Lエンジンを積み、驚異的なパフォーマンスよりもドライビングの楽しさに焦点を当てて開発されている。

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