【詳細データテスト】トヨタGRヤリス 文句なく速い 俊敏ながら高い安定性 最高のドライバーズカー

公開 : 2021.03.13 20:25  更新 : 2021.04.18 22:34

操舵/安定性 ★★★★★★★★★★

ここではハンドリングとスタビリティの評価を行うわけだが、必ずしもこのふたつが二律背反というわけではない。とはいえ実際には、アジリティに優れるクルマは安定感に劣る場合が多い。しかしながら、その枠に収まらないのがGRヤリスだ。

ウェットでもドライでも、極寒でなければ、テスト車が履くミシュラン・パイロットスポーツ4Sは並外れたグリップを発揮する。これにショートホイールベースとワイドトレッド、軽量さが相まって、方向転換の動きはおみごとというほかない。

GRヤリスは、コーナーの支配者といった趣だ。足取りは確かながら、素早く俊敏。しかも、ガッチリした手応えのステアリング越しには、確かなインフォメーションが伝わってくる。
GRヤリスは、コーナーの支配者といった趣だ。足取りは確かながら、素早く俊敏。しかも、ガッチリした手応えのステアリング越しには、確かなインフォメーションが伝わってくる。    LUC LACEY

ステアリングはダイレクトで、現代の主流からすればかなり重いが、心からうれしくなるくらいレスポンスがよくリニアだ。トヨタが、古風な油圧アシストのフィールを再現しようとしたようで、中立付近の手応えとソリッドさも十分すぎるほどだ。

いうならば、新型フォルクスワーゲン・ゴルフGTIのステアリングのほうが、GRヤリスよりクイックで軽く、レスポンスよく感じさせるべく演出しているようなフィールに思える。ルノーメガーヌR.S.に後輪操舵を与えたのも、同じような狙いだろう。

その点、GRヤリスは違う。俊敏に感じさせるのではなく、本当に俊敏なのだ。

だが、その本当のすばらしさは、スタビリティを犠牲にしていないことにある。水が溜まった道を走っても、路面の荒れた直線でないところでブレーキングしても、古い三菱ランサー・エボリューションやルノー・クリオR.S.197にあったようなガタつきは皆無だ。

旧型車を引き合いに出したが、同類といえるだろうクルマということでお許しいただきたい。GRヤリスも含む現在のハッチバックに与えた大きな影響という点においても、多くの価値観を共有している2台だ。

どちらかといえば、このスタビリティのレベルは、GRヤリスに対するわれわれの見方を変えた数少ない要素のうちのひとつといえる。スロットルオンでの安定ぶりとグリップはすさまじいまでにみごとで、デフが噛み合うと、コーナーから飛び出していく。

ところが、駆動力が前輪より後輪へ多く配分されるスポーツモードであってさえ、このクルマはブレーキングで暴れ、走行ラインをスロットルで大幅に矯正するような類のクルマではない。

どんなときでも非常に優秀で、クルマとの対話を大いに楽しめる。限界寸前、もしくは限界に達してのアジャスト性は損なわれいないのに、それでもやはり、このクルマのハンドリングは現代のヒーローと呼ぶにふさわしいものだ。

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