【詳細データテスト】スズキ・アクロス 高効率の電費 優れた燃費 実用重視ながら高いシャシー性能

公開 : 2021.04.17 20:25  更新 : 2021.05.10 05:10

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

奇妙なことに、アクロスはRAV4と競合する欧州市場に投入された。システム出力306psとなるトヨタの新世代PHEVパワートレインに4WDの組み合わせは、数ヶ月前に兄弟車で投入されたのとまったく同じものだ。

このシステムの構成は、185psの2.5Lアトキンソンサイクルエンジンをフロントに横置きし、前後各1基ずつの電気モーターを組み合わせたもの。モーターはフロントが182ps、リアはよりコンパクトで55psを発生する。

六角形メッシュのフロントグリルやその周辺のボディワークは、RAV4と大きく異なるポイント。無骨さやシリアスなオフローダー感はやや薄まっている。こちらのほうが好ましいという声も、テスター陣からは聞かれた。
六角形メッシュのフロントグリルやその周辺のボディワークは、RAV4と大きく異なるポイント。無骨さやシリアスなオフローダー感はやや薄まっている。こちらのほうが好ましいという声も、テスター陣からは聞かれた。    OLGUN KORDAL

このシステムを、一般的なSUVのそれと異なるものにしているのは、電動化デバイスだ。前後アクスルの機械的な接続はなく、多くのプラグインSUVがそうであるように、後輪をモーターで駆動する4WDとなっている。

内燃エンジンとフロントモーターの出力は、トヨタ独自のプラネタリーギアを用いたトランスアクスルを介して前輪を駆動する。このユニットにはクラッチが組み込まれ、ハイブリッドモードやEVモードを選択した際に、エンジンとの接続を切ったり断続的にエンジンを停止させたりすることができる。

いっぽうで、モーターとエンジンが同時に稼働する際には、遊星歯車式e−CVTがエンジン回転数を調整して、もっとも効率的な状態でクルマを走らせる。

言及しておくべき要点は、リアへのアウトプットシャフトがないこと。たとえば、軽いオフロードに対応するトレイルモードでは、4WDシステムやリアモーターの作動状況を決めるのは、すべてESPやトラクションコントロールを起動するセンサーの情報だ。

パワートレインそのものは、プラグインではないRAV4ハイブリッドと同じものだ。ただし、駆動用バッテリーはハイブリッドの6.5Aニッケル水素に対し、51Ah液冷式リチウムイオンで、フロントモーターはハイブリッドの120psより5割少々パワフルになっている。

この変化により、大きく変わった点はふたつ。まずは車重で、パッシブダンパーを装備したアクロスは、RAV4ハイブリッドより280kg程度重い。それでも、数ヶ月前にテストしたレンジローバー・イヴォークP300eよりは200kgほど軽いのだが。

次が性能向上で、0−100km/h加速は6.0秒と、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIのDSGモデルと同等ながら、CO2排出量の公称値は22g/kmに過ぎない。しかも、EV走行の航続距離は75kmに達するという。開発はトヨタが行ったわけで、スズキの功績ではないものの、技術的には大きな進歩を果たしたといえる。

エクステリアのデザインについては、語るべきことはそれほど多くない。サイズやシルエットはRAV4と変わらず、フロント周りが穏やかな顔つきに改められた程度の変更しか施されていない。モノグレード展開で、装備内容は充実。19インチホイールが標準装着される。

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