【センスが光る】C5エアクロス「PHEV」仕様に見た、シトロエンの勘所

公開 : 2021.08.25 06:15  更新 : 2021.12.27 23:42

シトロエン 電動化の勘所

選択時はエンジンが稼働し続けるのがスポーツモード。ドライブフィールはパラレル式そのもの。純電動と比較すると加減速時の駆動トルクの揺らぎが気になる。

それはダイレクトなエンジンコントロール感ではプラス要素。生のままの操る手応えを求めるのは「スポーツ」に相応だろう。

一度座ってみれば分かる、どんなクルマとも異なる座り心地。ナッパレザーを用いたシートは、前席にシートヒーター、運転席にはマルチポイント・ランバーサポートを装備している。
一度座ってみれば分かる、どんなクルマとも異なる座り心地。ナッパレザーを用いたシートは、前席にシートヒーター、運転席にはマルチポイント・ランバーサポートを装備している。    前田恵介

なお、意図的にコントロール性の変化を抑えているのだろうが、扱いやすさはどのモードでも同じであり、ことさらの目新しさよりも馴染みやすさを重視しているのは“シトロエンのセンス”だ。

快適性とか乗り味の質感において「重さは正義」とよく言うのだが、C5エアクロスPHEVは同エンジン車に対して200kg以上重い。

さらにエンジン車ではトーションビームのリアサスが、PHEVではマルチリンク式の独懸に変更されている。

SUVでは乗り心地に定評のあるC5エアクロスにこれらの好条件である。試乗前から快適性には期待していたのだが、それ以上だった。

乗り心地/静粛性について

バネ下の重さを意識しないようなストローク感。微小ストロークからしなやかに路面追従し、大きくストロークするような状況でも収束性がいい。

その動きはこれまで以上にゆったりと据わり良くなり、悠々とした乗り心地と優れた安定感を高い領域で両立している。段差乗り越えなどの突き上げで車軸まわりに若干の揺動が感じられるが、そういった部分も含めて重質な味わいがある。

PHEV仕様は、リアサスペンションがマルチリンク式に。ガソリン仕様/ディーゼル仕様はトーションビーム式だ。
PHEV仕様は、リアサスペンションがマルチリンク式に。ガソリン仕様/ディーゼル仕様はトーションビーム式だ。    前田恵介

しかも、エンジンまわりの騒音やロードノイズも低い。エンジン稼働走行のスポーツモードや全開加速でも荒々しい騒音は聞こえてこない。

スポーツモードでは迫力不足とさえ思えるのだが、無駄に乗員を刺激しないのもいい。厚みとか減衰感を覚える静粛性である。

ゆったりした乗り味にはあれこれクルマからの指図のない操安がよく似合う。エンジン車からの追加重量の多くを床下に配置した低重心化も効いているのかもしれないが、腰の据わった落ち着きと負荷変動を往なすようなストローク使いもあって、操舵に従順なハンドリングを示す。

もちろん、過剰あるいは神経質な挙動は皆無。ドライバーもまた悠々と寛いで過ごせる走りなのだ。

「買い」か?

同系のプジョー3008のPHEVには電動4WDを採用しているのだが、残念ながらC5エアクロスPHEVはFFのみの設定。

190mmの最低地上高を確保しているが、4WDの設定がないので悪路踏破性にこだわるユーザーには勧めにくい。

C5エアクロスSUVプラグインハイブリッド(外装色:ブラン ナクレ)
C5エアクロスSUVプラグインハイブリッド(外装色:ブラン ナクレ)    前田恵介

C5エアクロスPHEVが最も似合うのは、寛ぎを柱にした快適性にこだわるユーザーだ。同価格帯で選べるモデルの中では最も快適性と走りの質感に優れている。

それはとてもシトロエンらしい味わいでもあり、和みのドライブを楽しませてくれる。家族や気が置けない友人と穏やかな時間を過ごすには最適である

付け加えるならPHEVとしては買い得感も良好である。同等装備のディーゼル車との価格差は74万円。また、RAV4 PHVは電動4WDを採用するアドバンテージはあるものの469万円からの設定であり、プレミアム感や走りの質感を考慮するなら国産車と比較しても十分に競争力のある価格設定である。

シトロエンというと仏車好き御用達のイメージも強いが、C5エアクロスPHEVの走りの魅力は一般的なユーザーにこそ理解されやすいもの。

高性能とかスポーツ性に食傷気味のユーザーならばなおさらである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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