詳細データテストを振り返る 前編 ほかのテスターに試乗車をおすすめ 問われるプレゼントのセンス

公開 : 2021.12.25 12:05

フォード・フォーカスSTエディション:リチャード・レーンからイリヤ・バプラートへ

レーンは、バプラートへのプレゼント選びに関して、判断材料をあまり持ち合わせていなかった。「イリヤがチームに加わって、まだ日が浅いからね」ということだ。「ただ、いろいろ調べて、わかったこともある。まず、若くて背が高い。次に、おもしろみのあるエンジンが好きらしい。というわけで、フォーカスSTの2.5Lエンジンには興味を惹かれるんじゃないかと思ったんだ。しかもこのエディションモデルなら、彼が気に入りそうな調整式ダンパーもついているし」。

バプラートは、STのサスペンションをバークシャーのB級道路に合わせるために工具を持ち出したかったようだが、どうにかその衝動を抑え込んだ。そして、これを選んだこともクルマそのものも高く評価しつつも、好みには合わなかったようだ。

新人のバプラートは、贈られたクルマに満足できなかったらしい。プレゼント選びには、相手をよく知ることが大切だ。
新人のバプラートは、贈られたクルマに満足できなかったらしい。プレゼント選びには、相手をよく知ることが大切だ。    LUC LACEY

「自分では選ばないかな。でも、実用性もあるパフォーマンスカーは好きだよ。夢中にはなれないけれど、楽しめるんじゃないかな。MTなのはいいよね。今じゃあんまりにも少なくて残念だけど。それに、こういう道にも合っているし。ただ、ステアリングフィールはちょっと変。まるで、どこかにゴムを使っているみたいだったよ」。

ヒュンダイ・アイオニック5:イリヤ・バプラートからスティーブ・クロプリーへ

新人ロードテスターのバプラートは、クロプリー担当を割り当てられてかなり気を使ったという。われらが編集長は百戦錬磨で、ほかのテスターふたり分くらいの経験値がある。下手なプレゼント選びは許されない。そこで合理的な彼は、統計的な分析を試みた。

「過去3年、クロプリーが選んだクルマをみると、そこにはきちんとしたロジックがあるとわかったんだ。そのブランドにとって重要な電動車で、状況に変化をもたらすクルマを選んでいるんだってね」。

客観的な分析が、プレゼント選びの成功につながることもある。サプライズ形式が、ほかの人のプレゼント選びに支障をきたすこともある。
客観的な分析が、プレゼント選びの成功につながることもある。サプライズ形式が、ほかの人のプレゼント選びに支障をきたすこともある。    LUC LACEY

このアイオニック5は、間違いなくその条件を満たしている。「なかなかいいチョイスだ。多分、自分でもこれを選ぶよ」と、クロプリーはご満悦だった。「ルックスはアメイジングだし、この韓国車メーカーはEVに関していい仕事をしていると思うよ。この辺りのボコボコの路面でもうまくいなして走るしね。レーン逸脱警告が簡単に切れれば、もっといいんだけど」。

そうそう、クロプリーが持ってきたかったアルピーヌだが、じつはバプラートが別件で借りていたことがあとでわかった。お互いに何を選ぶか秘密にするルールだと、そういうことになるリスクがある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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