詳細データテストを振り返る 前編 ほかのテスターに試乗車をおすすめ 問われるプレゼントのセンス

公開 : 2021.12.25 12:05

ボルボV90クロスカントリー:ヴィッキー・パロットからマット・ソーンダースへ

このグレーに塗られたボルボのワゴンは、ファイブベルズパブの駐車場にあまりにも馴染んでいて、試乗車ではなく一般客のクルマかと思ってしまった。これを選んだパロットは、2021年の新車という基準をわずかに外れることを認めているが、Googleベースのナビ搭載をはじめ、今年に入ってアップデートが図られたモデルだ。

「みんなケータハムやGT3なんかをほしがると思ったけど、わたしはこれにしたの」と彼女はいう。「マットみたいに子供がふたりいて郊外に住むとしたら、本当にほしいのはボルボV90クロスカントリーみたいなクルマでしょ。パパのクルマとしてはこれ以上ないし、世界最高レベルのワゴンだもの。おまけに、自動牽引フックまでついているんだから」というのが、選択の理由らしい。

ディーゼルエンジンとすばらしく快適なレザーシートを備えるボルボは消えゆく運命にあるが、それが残念に思えるほどすばらしいクルマだった。
ディーゼルエンジンとすばらしく快適なレザーシートを備えるボルボは消えゆく運命にあるが、それが残念に思えるほどすばらしいクルマだった。    LUC LACEY

プレゼントされたソーンダースは、横になるほどではないにせよ、これ以上ないほどリラックスした様子で試乗を終え、クルマを眺めていた。彼は自他共に認めるボルボ好きで、長期テストも一度ならず担当している。そして、パロットがこのジャンルでもとくに秀でた一台を選んだ、と考えたようだ。「間違いなく、ボクの人生にはボルボの形をした穴が空いているね。いまのところ、そこにはXC60がすっぽりハマっているけど、絶対にV90はもっとフィットしてくれるはずだよ」とまでいうのだから。

ボルボの中でV90は、未来よりも過去に寄ったモデルだ。ディーゼルエンジンとすばらしく快適なレザーシートを備えているが、そのどちらも遠からず姿を消す運命にあるアイテムだ。こういうクルマとの別れが近づいているのは、残念でならない。

フォードマスタング・マッハE GT:スティーブ・クロプリーからヴィッキー・パロットへ

クロプリーは、ほかのメンバー以上にプレゼント選びを熟考した。最初にチョイスしたのはアルピーヌA110レジャンド。A110なら、パロットが満足するのは間違いなかった。「動画でA110について語りながら、感極まって泣いていたからね」。

ところが、運悪く広報車が予約済みで借りられなかった。そこで、改めて選び直したプランBが、当初の予定よりずいぶんマッチョなマスタング・マッハE GTなのだ。「彼女はEV好きだからね」とクロプリーは言う。「しかも、速くて、実用的で、ファミリーカーとしても使い勝手がいい。彼女が必要としている条件を完璧に満たすんじゃないかな」。

たしかにプレゼント相手の条件を満たすクルマだが、それ以外の部分ではマイナス要素もあった。
たしかにプレゼント相手の条件を満たすクルマだが、それ以外の部分ではマイナス要素もあった。    LUC LACEY

試乗を終えて、パロットはおおむね満足したようだが、不満も口にした。「新型EVの中でも、これは出来のいい部類に入るわね。なんでもできるタイプのクルマでしょ。楽しいし、速いし、ルックスもクール。ただ、乗り心地はイマイチね。あと、電動車なら、ステアリングホイールに回生ブレーキを調整できるパドルがついていてほしいけれど、このマッハEにはついてないのよ」。

ほかのテスターの評価も聞くと、落ち着きのない乗り心地とステアリングの出来栄えに不満の声が上がった。「ポルシェタイカンと乗り比べれば、価格差の理由がどこにあるかはっきりわかるよ」と、ジェームズ・ディスデイルはコメントしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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