ポルシェ718ボクスター GTS(4) 長期テスト サーキット走行で本領発揮

公開 : 2022.01.23 09:45

718ボクスターの高性能版、GTS。Jr.スーパーカー級のロードスターを日常使いすることで、本性と魅力に迫ります。

積算9673km フェラーリSF90と好対照

ロンドンの西、スラウの街に位置するフェラーリの北ヨーロッパ支社へ、718ボクスター GTSで乗り付けた。フェラーリSF90 ストラダーレを借りるため。

2台は、オールドスクールなスポーツカーの最後と、新技術を搭載した先駆者という意味で対照的といえる。SF90は、ターボエンジンと3基の駆動用モーターを備えるPHEVで、EVモードでの走行も可能だ。

長期テスト車のポルシェ718ボクスター GTS 4.0と、フェラーリSF90 ストラダーレ
長期テスト車のポルシェ718ボクスター GTS 4.0と、フェラーリSF90 ストラダーレ

対するミドシップの後輪駆動、3ペダルMTを備える718ボクスターは、かなり従来的。20年後、どちらがより魅力的に映るのだろうか。

積算1万287km ボクスターでサーキット走行

ポルシェ718ボクスターは、サーキット走行を楽しむタイプではないと思われているようだ。重心は低く重量配分にも優れ、ステアリングの反応は直感的。リアタイヤにLSDを装備し、トラクションを掛けたり、テールスライドが自在でも。

ボクスターでレースを楽しんでいる人も、世界中にいるだろう。それでも、サーキット走行に関する話題はあまり挙がらないように感じる。理由はどこにあるのだろう。

ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)
ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)

固定ルーフを備える718ケイマンの方が、ボディはより強固で、操縦の正確性も高い。ハードな走行への親和性は高く、どちらかといえばサーキットへ近い位置にいることは確かだ。

とはいえ、718ボクスターの剛性感も、他のカブリオレ・モデルと比べれは遥かに高い。サーキットを楽しめる能力を備えていても、気軽に髪を風になびかせて走るクルマ、というイメージが拭えないからかもしれない。

シャシーのバランスと意思疎通のしやすさ

最も日常に近いサーキット走行会も楽しめるクルマを考えた時、マツダMX-5(ロードスター)が筆頭に来るだろう。だがこのロードスターも、日常的に風を楽しめるクルマではある。ボクスターと違ったイメージが形成されていることは、不思議に思える。

では長期テストの718ボクスターをサーキットで楽しんでいるのかと聞かれれば、先日、アストン マーティンが保有するシルバーストーンのストウ・サーキットを走らせる機会があった。撮影の一貫として。

ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)
ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)

英国のサーキットとしてはあまり一般的な場所ではないが、高速コーナーと低速コーナー、程々にタイトなヘアピンとS字カーブ、2本のストレートなどが組み合わされている。このレイアウトは、公道用モデルを楽しむのにうってつけ。

718ボクスター GTSを限界領域まで攻め込むことができる。アストン マーティン・ヴァルキリーでは、同じように走らないでください、と忠告を受けたが。

予想通り、718ボクスター GTSは楽しかった。グリップ量やターンイン時の鋭さは、よりハイチューンのボクスター・スパイダーには及ばない。しかしシャシーのバランスと意思疎通のしやすさは、同等に優れている。

コーナーの頂点を、可能な限り高い速度で回るだけでも爽快。限界領域付近でリカバリーできる幅が広く、安全性も充分だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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