概念を超越した速さ ブガッティ・シロン・スーパースポーツへ試乗 480km/h超の公道仕様 後編

公開 : 2022.04.06 08:26  更新 : 2022.04.12 13:43

時速300マイル(482.8km/h)の壁を打ち破った、W16気筒のシロンSS 300+。公道仕様を英国編集部が味わいました。

良い意味でVWグループのクルマらしい

ブガッティのテストドライバー、アンディ・ウォレス氏がシロン・スーパースポーツの助手席に座った。筆者はステアリングホイール上のスタートボタンを親指で押す。お目覚めはそこまで過激ではない。

排気量1.0L当たりの最高出力は、7000rpmで200psもあるハイチューン。8.0L W16気筒クワッドターボ・エンジンは、タダモノではない唸りを放つ。ただし、低回転域でのレスポンスを改善させるため、4000rpm以下ではツインターボで回る。

ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)

4気筒が4列並ぶ、W16気筒という独特なシリンダーレイアウトの回転フィールは、V型12気筒のようにシルキーではない。しかし大排気量だから、ボートや戦車のエンジンのように、サウンドのボリュームは大きい。

感心するのが、良い意味でフォルクスワーゲン・グループのクルマらしいこと。トランスミッションは7速デュアルクラッチのオートマティックで、いとも簡単に発進できる。

電動パワーステアリングが備わるステアリングホイールの重み付けは、軽すぎず重すぎず、丁度いい。ロックトゥロックは2.2回転とクイックだが、直進性が良く安定していて、切り込んだ時の応答性も良好。絶妙なブレンドだ。

乗り心地は適度に硬め。ロードノイズは大きいが、強固なカーボンファイバー製タブシャシーを備えるモデルとしては、一般的なものでもある。高級な内装素材が、適度に吸収してくれている。

姿勢制御は秀抜 言葉にばらないほど速い

ドライブモードは複数用意されているが、エンジンやトランスミッションの振る舞いは、基本的に変わらない。ステアリングホイールの感触にも違いは生じない。

どこが変わるのかというと、リアウイングの高さと角度。フロントのディフレクターも同調し、空力特性が変化する。車高が落ち、サスペンションの硬さも引き締まる。

ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)

ただし、乗り心地に明らかな差はなく、気付かないドライバーもいるだろう。ノーズリフトを機能させた時の方が、違いは大きい。

走行スピードに関わらず、姿勢制御は秀抜。僅かなボディロールも示す。コーナリングスピードが高まるほど、ステアリングホイールの重みも増す。ドライバーに、攻め込んでいけるという安心感を与えてくれる。

手のひらに伝わるフィードバックも、相当に豊か。フロントタイヤにもトルクが掛かる四輪駆動としては、珍しいといえる。全幅は2038mmもある。車重も1995kgある。それでも、スポーツカーとして運転が楽しい。

タイヤの温度がドライで25度、ウェットで35度を超えると、最大のトラクションが得られることをダッシュボードの表示が教えてくれる。フルスロットルを受け付け、本気の加速力を解き放てる。

若干緩やかにカーブしたウェット状態の道で、2速からアクセルペダルを目一杯踏み込む。ウォレスの提案だ。猛烈にダッシュし、トラクションコントロールが介入し、一瞬の振動が伝わる。すぐにトラクションが回復した。

言葉にならないほど速い。気持ち悪くなるほど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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