メルセデス・ベンツSクラス 詳細データテスト 最良ではない快適性 走りはスポーティではないが上々

公開 : 2022.04.16 20:25  更新 : 2022.04.26 01:45

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

スリムなヘッドライトとソフトな曲線により、新型Sクラスは先代ほどけばけばしくない外観だが、じつはホイールベースの長短を問わず、サイズアップしている。オーバーハングは短縮されているので、全長の延長分はホイールベースに充てられている。また、全高も増している。ドアミラーを含む全幅は21mm狭くなったが、トレッドは前後とも広げられた。

今回テストしたS580e Lの全長は5320mmで、競合するBMWアウディと同等だが、ロールス・ロイス・ゴーストの5546mmにはまだ届かない。ボディシェルのアルミ比率は増えているが、100kmのEV走行を可能にする28.6kWhのバッテリーを積むこともあり、車両重量は2385kgに達する。

テスラやレンジローバーのように、Sクラスも電動ポップアップ式ドアハンドルを採用。走行時はボディ面と一体化するので、ドアミラー内側の小さなエアロストリップと同じく、0.22という低いCd値の達成に寄与する。
テスラレンジローバーのように、Sクラスも電動ポップアップ式ドアハンドルを採用。走行時はボディ面と一体化するので、ドアミラー内側の小さなエアロストリップと同じく、0.22という低いCd値の達成に寄与する。    MAX EDLESTON

パワートレインはガソリンもディーゼルも、英国ではすべて直6ターボのみのラインナップとなった。しかし、4.0LのV8マイルドハイブリッドも開発中だといわれる。また、S580eがそうであるように、6気筒ガソリンには電気モーターを組み合わせて500psオーバーとした仕様も存在する。

いずれのモデルも、トランスミッションはメルセデス内製の9Gトロニックこと、トルクコンバーターATを搭載する。9速はオーバードライブで、高速道路巡航時のエンジン回転数を1600rpm程度に低く保つ。

エントリーグレードのS350dを除けば、四輪駆動も標準装備。オプションでは、四輪操舵も選択できる。リアサスペンションに用いる鍛造アルミのリンクは、このシステムのために開発された。4WSの装着により、ロングホイールベースモデルは回転直径が2mほど縮小される。

リア周りでは、サブフレームキャリアとストラットのゴムブッシュが、静粛性改善のために新開発された。エアスプリングは標準装備で、ADS+アダプティブダンパーを組み合わせて、四輪を独立制御する。速度が上がると、ドラッグを減らすために地上高が自動的に10mm低くなるが、もっともスポーティな走行モードにすると、さらに7mmダウンする。

テスト車には装備されていないが、E−アクティブボディコントロールというデバイスも存在している。これは、旧Sクラスで導入された油圧作動のマジックボディコントロールの発展版で、カメラでスキャンした路面の情報をもとに車体のピッチやリフト、ロールを抑えるシステムだ。マイバッハ仕様には標準搭載されるが、ほかのバージョンにはオプションでも用意されない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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