メルセデス・ベンツSクラス 詳細データテスト 最良ではない快適性 走りはスポーティではないが上々

公開 : 2022.04.16 20:25  更新 : 2022.04.26 01:45

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

これほど長くて重い車体でありながら、ここまでハンドリングが整ったクルマを、このSクラス以外に見つけるのは難しい。デフォルトのコンフォートモードでは、シャシーのセッティングはゆったりとして確実性重視だ。走行ラインを決めるのがイージーで、ロールは比較的抑えられていないが、常に安定していてコントロールが効く。

ステアリングフィールはまったくないが、アシスト多めのラックは気楽さとレスポンスのバランスがほどよいギア比に設定されている。実際より100kg以上は軽いクルマを操っているように感じさせてくれるのだ。

活発なドライビングでも、強力なグリップとトラクションや好ましいステアリングレスポンス、整ったボディコントロールのおかげでしっかり走ってくれる。ただし、7シリーズほどスポーティではない。
活発なドライビングでも、強力なグリップとトラクションや好ましいステアリングレスポンス、整ったボディコントロールのおかげでしっかり走ってくれる。ただし、7シリーズほどスポーティではない。    MAX EDLESTON

よりスポーティな方向にモードを切り替えると、ステアリングは重くなり、パワートレインは活気を増し、サスペンションはボディコントロールをタイトにする。そのときのS580eは、じつに目を見張るような走りを見せてくれる。走り出したときには思いもよらなかったような、上質さと落ち着きがそこには感じられるのだ。エレガントなPHEVでスポーティさを兼ね備えるものはめったにないが、このSクラスは速く走らせてもよくできたところをみせる。

だからといって、新型Sクラスがフライングスパーや7シリーズに肩を並べるようなハンドリングを発揮するスポーツサルーンだ、というわけではない。車体のロールも浮き沈みも、運転に退屈しなような道に入ればベントレーBMWより大きくなるし、一般的に大型サルーンのドライビングを満足できるものにしてくれる、わかりやすいシャープさは感じられない。

シャシーバランスは、競合するベントレーやBMWより明らかにフロントヘビー傾向が強い。後輪駆動のライバルたちがテールを沈めて走るところを、このメルセデスはニュートラルに走り、タイヤの限界を超えると完全にアンダーステアへ転じる。とはいえ、そこまで達することはまずないだろう。ウェットコンディションでさえ、そのグリップとトラクションは最上級だからだ。

全体的にみて、このSクラスはショーファードリブンなら満足できるが、オーナードライバーであれば、ベントレーやBMW、さもなければアルピナB7を選んだほうが、より優れた、楽しい走りを味わえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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