メルセデス・ベンツSクラス 詳細データテスト 最良ではない快適性 走りはスポーティではないが上々

公開 : 2022.04.16 20:25  更新 : 2022.04.26 01:45

内装 ★★★★★★★★★☆

デジタル化をさらに推進しながら、慣れ親しんだ妥協ないほど贅沢なラウンジ的雰囲気とも両立するという高いハードルを自らに課して、メルセデスはSクラスのキャビンを作り上げた。大部分においては、そうした要素のブレンドに成功している。

ダッシュボードの表面的なデザインはとくにいい感じで、キャビンはおおむね先代より広く感じられるが、マテリアルのリッチさや全体的なソリッドさ、守られている感じは犠牲になっていない。

全体的には非常によくできたキャビンだ。しかし、それだけに些細な問題が目立ってしまう。機能的に大きな欠陥ではないが、Sクラスともなると完璧を求めてしまう。
全体的には非常によくできたキャビンだ。しかし、それだけに些細な問題が目立ってしまう。機能的に大きな欠陥ではないが、Sクラスともなると完璧を求めてしまう。    MAX EDLESTON

あらゆる面でA8の冷たい雰囲気の上を行き、美しい構成の区切り方で7シリーズに勝る。ベントレーフライングスパーには、手触りやセンスで及ばないにしても、視認性や開放感では上回っている。

暗くなっても、アンビエントライトが華を添え、状況はよくなるばかりだ。色調と明るさが調整でき、キャビンをラグジュアリーで洗練された空間に演出してくれるそれは、大成功だといえる。

その体験を高めるのがシートだ。前席は深く身体を囲む形状でありながら広さがあり、サポート性を持ちながらソフトだ。こんなバランスのよさはめったになく、いかなるクラスのクルマをも凌ぐ。また、マッサージ機能は10のプログラムが用意される。

後席はすばらしいというほかない。とくにロングボディはそうだ。左右席は電動調整機能が備わる。テスト車に装着されていたショーファーパックは、可動式フットレストが含まれ、助手席のスライドも前倒しも、通常より幅が大きくなる。また、電動ブラインドにより、外界から遮断できる。

ただし、問題点がまったくないかといえば、そうとはいえない。ほとんどすべてのスイッチをセンターディスプレイに統合したことは、エアコンのセッティング変更を必要以上に困難にしている。

また、残された実体スイッチの中には、チープに感じられるものもある。ドアミラーの調整部はそのひとつで、エンジンスタートボタンも同様だ。

さらに、ディスプレイの大きさは、中央の送風口をダッシュボードの上のほうへ追いやり、手が届きにくい。そのほか、ドアに設置された電動シートの操作スイッチは、手触りに満足できず、妙に硬くて扱いにくい。

たしかにどれも些細なことだ。とはいえ、せっかくほかのよくできた部分が高級感を醸し出した努力に、水を差しているのもまた事実なのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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